閃光少年
もしも来栖翔が、四ノ宮那月には嘘を吐かずに『本当のこと』を話していたら――
motif from 東京事変「閃光少女」
木曜日の朝、いつもどおりの時間に那月は目を覚ました。
向かい側のベッドの上に翔がまだ寝ているのを見つけて、自分の方が早起きをしたのかもしれないと、翔よりも先に起きたことが嬉しくて文字通り跳ね起きて近付いた。
ところが、横たわっていた翔は寝ていたわけではなく、今までに見たことがないくらいにひどく苦しそうな表情で震えていた。
まるで溺れたように喘ぐ呼吸に青白い顔。
それを見た那月は横向きに眠る翔の二の腕に手のひらを静かに置いて「だいじょうぶ?」と問うた。
昨夜おやすみなさいと言葉を交わした時に着ていた服がジャージに変わっているところを見ると、今朝も翔は外へ走りに出ていたらしい。
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