第四回 猗窩煉ワンドロ、ワンライ お題「星」「逃避行」「『元炎柱煉獄杏寿郎は死んだものとお思い下さい』」
手にした一枚の上質な和紙に丁寧にしたためられた文字を声に出して読み上げると、猗窩座は眉をしかめた。
「なんだこれは」
「遺書だ!」
快活に答える煉獄の返しを耳にしても、猗窩座の眉は元に戻るどころか、ますます歪められるばかりだ。
「杏寿郎、お前、死にたいのか?」
「まさか!」
「では鬼になるのだな?」
「ならない!」
「ならばこれはなんだ」
「うむ。実はこのたび、元炎柱としての自分と決別しようと思ってな」
突き返された曰く「遺書」を手にしながら煉獄が口にした言葉を、猗窩座は頭の中で反芻していた。
*
闇に浮かぶ真円の月が、正中に差し掛かる時分、草木が風に擽られ笑う声のみが耳に届く。
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