無配ティーカップフォックスのミスタは、その名のとおり、
ティーカップサイズのキツネです。
小さいころ、おやや、なかまとはぐれてしまったミスタは、
じんじゃでねむっていたところを、
やさしい、シュウおにいさんにひろわれたのでした。
それいらい、ミスタはおにいさんとずっといっしょです。
シュウおにいさんにはおともだちがいて、
プシュという音に、とってもびんかんなアイク、
げんきいっぱいで、ぽぐ!というなきごえのルカ、
いつもミスタのおなかを、ずー!とすったりしてくるヴォックス、
みんな、ミスタにとってもやさしくて、だいすきなおともだちです。
ミスタのあさは、シュウおにいさんを、おこすことから、はじまります。
「きゅー!」
おにいさんのかおの上にのり、小さなにくきゅうでふみふみすると、
くふくふとわらいごえがして、大きな手のひらがミスタをつつみます。
「まだあさだよ、ミスタ」
「ー!」
もうあさなの!となきますが、
おにいさんのたいおんで、だんだんねむくなってしまいます。
「み…………」
そうして、いっしょに、二どねしちゃうのでした。
おひるになると、二どねから目をさましたミスタが、
シュウおにいさんのかおの上にのります。
このとき、おはなとお口をふさぐので、
おにいさんは、ブハッ!と目を見ひらいておきます。
このやりかたはよくないよ、といわれますがしりません。
おきないほうがわるい!とミスタは、フーン!とそしらぬかおをします。
そのあと、ミルクをひたしたやわらかいクッキーを、
あむあむしていたら、ピンポーンと音がひびきます。
おにいさんはあまりおそとに出ないため、
この音は、まいにちのようにきいています。
ミルクを先入れしたシリアル(とてもだいじなことらしいです)を、
先にたべおえたおにいさんが、げんかんにむかいます。
「やぁミスタごきげんだね」
「みっ!」
いえに入ってきたヴォックスが、あたまをなでます。
ミスタはとてもいい子なので、あいさつだってできるのです。
「いまごはんたべてるの?」
「もしかして……あさ、おきれなかった?」
「う゛…………」
「きゅー!」
アイクとルカがそういうと、
おにいさんはいたたまれなさそうに目をそらします。
そのようすを見たミスタは、口のまわりをミルクでぬらしながら、
もっといってやって!とないてうったえました。
それから、みんなといっしょにあそびます。
ゲームをしているみんなの、たのしそうなようすを見ていると、
ミスタもとってもたのしくなります。
ですが、ホラーゲームとよばれるものだけは、
ニガテで、ソファのすみで小さくまるくなってしまいます。
もちろん、ミスタもみんなとうたったり、
おえかきしたり、こちょこちょされたり、すわれたり、
さいごの二つはいつも、ヤー!といやがるそぶりを見せますが、
ほんとうはかまってもらえるのが、すごくうれしいのです。
たのしいじかんはあっというまで、
「ばいばい、ミスタ。またね」
とみんながかえっていきます。
みんなのすがたが見えなくなったあと、
ミスタはいつもトビラに向かってなきます。
「きゅーん、きゅーん」
もう二どとあえないのでは?とふあんになるのです。
だってミスタは、もうなかまとは、あえなくなってしまいましたから。
シュウおにいさんは、そんなミスタをだっこします。
「さみしいね、でもまたすぐあえるからね」
「きゅん」
そのうちミスタは、おにいさんのうでの中で、なきやみました。
ミスタはシュウおにいさんのうでの中が、せかいで一ばんだいすきなのです。
ゆうごはんをいっしょにたべて、
(きょうはミスタのだいすきなチキンでした)
ニガテなおふろもいっしょに入り、
ベッドに入ってから、きょうはたのしかったね、
とおはなししていたら、ミスタのお目目がぱちぱちとまばたきがふえ、
やがてまぶたがゆっくりとおりていきます。
おにいさんは、すぅすぅと小さなねいきを立てるミスタに、
ちゅっとキスをおとすと、あたまをやさしくなでます。
「おやすみ、ミスタ。いいゆめ見れるといいね」
ミスタがこわがらないよう、まめでんきゅうをつけたまま、
おにいさんもねむりにつきます。
こうしてミスタとおにいさんの一にちはおわりです。
その日、ミスタはおにいさんと、
だいすきなチョコレートをたべる、しあわせなゆめを見たのでした。