最悪だ。窓の外の景色が朱く染まっているのを見て、七海はため息をついた。今日は一ヶ月間続いている舞台の休演日だった。公演日と同じ時間に起き、溜まってきた家事を片付けるところまでは良かった。昼食を終え、コーヒーを淹れて台本を読み返そうとページを開いたところで記憶がない。
七海は自らのスマートフォンを開き、舌打ちをした。画面いっぱいに広がる珍妙な表情。「イケメン」と名のつくランキングを総なめにしているとは思えないほど原型をとどめていない変顔である。こんなものを見たらその美しくなさか行動の幼稚さに幻滅されるだろうと思うが、ファンからすれば貴重だとありがたがれるものなのだろうか。残念ながら七海はそのどちらでもない。
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