密会 旅の途中で大きな街に立ち寄った。久しぶりの街の賑やかさに若い連中は浮かれている。マトリフもようやくベッドで眠れると思うと足が軽くなった。
先に宿屋をおさえようと街の大きな通りを歩く。人通りが多く、アバンを先頭にしてマトリフは一番後ろにいた。
すると誰かに手を引かれた。驚いて振り返ると青年が立っている。見かけない顔だが、それが誰だか理解してマトリフは慌ててその青年の手を引いた。
「どうしたマトリフ」
気配に鋭いロカが振り返る。ロカはマトリフの手を青年が掴んでいるのを見た。
「いや、知り合いだ。ちょっくら飲んでくるから、先に宿屋に行っててくれ」
言いながらマトリフは青年を連れて路地裏のほうへと向かう。怪しまれなかっただろうかと振り返るが、ロカたちは人混みに紛れて見えなくなっていた。
1951