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    yukarixxx000

    @yukarixxx000
    二次創作が好きなオタク。大体男同士カプを書いてます。
    ※ポイピクにアップした作品は後日ピクシブにも投稿します。

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    yukarixxx000

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    号福&へし燭。
    メインは号福のほうです。どちらのカプもすでにくっついてること前提。
    号さんと福さんの回想を見てときめいた勢いで書きました。
    福さんに優しい号さんに死ぬほどときめきます、というお話です。
    ※号→福は「光忠」呼びです
    ※福さんは焼失設定
    (勢いで書いているので粗がいろいろあるかもしれませんが、お目こぼし頂けると幸いです)

    唯一無二「日本号、明日の出陣の件だが――」
     言いながら日本号の部屋の障子を開けて、そうして長谷部は言葉を失った。部屋には日本号以外に、福島光忠の姿もあったからだ。
     もっとも、ただ福島がいたというだけなら、長谷部もたいして驚かなかった。日本号と福島は、この本丸に刀剣男子として顕現する以前からの知己だ。一時期、共に福島正則のもとにいた。その縁もあってか、福島は顕現当初から日本号に非常に友好的だった。日本号を「号ちゃん」と呼び、しょっちゅう絡んでいた。日本号も、口では「俺の後ばっかりついてくるなよ」と言って呆れた素振りを見せながらも、決して福島を邪険にはせず、何くれと面倒を見てやっていた。少なくとも長谷部の目に映る限りでは、二振りは良き友人同士だった。長谷部以外の男士たちや審神者も、同じような認識をしているのではないかと思う。
     だから、本丸の誰もが夕食も入浴も終えてしまったような頃合いに、福島が日本号の部屋にいたとしても、別段おかしくは思わない。見た目には成人男性の形を取った男士たちだ、酒盛りをすることもあるだろう——福島は酒の失敗を忌避している様子だったから、酒ではなく茶を飲むのかもしれないが。
     しかし、ひんやりとした廊下とは打って変わって暖かな部屋の中、福島は酒も茶も飲んではいなかった。それどころか、起きてすらいない。
     眠っていたのだ。それも、日本号の腿を枕にして。
    「おい、へし切。人様の部屋の障子を開ける前に、一声かけて許可を得るのが礼儀じゃねえか?」
     日本号がむっつりとした顔で言う。しかし長谷部は目の前の光景に衝撃を受けるあまり、返事をすることができなかった。
     毛布をかけられた福島は、安らかな寝息を立てて眠っている。寝顔もまた穏やかだ。明らかな安眠、どう見ても熟睡。長谷部が訪れたことにも気づかず、気持ち良さそうに眠り続けている。起きる気配は欠片もない。
     酷く、無防備だ。日本号の脚を枕にして寝入る福島からは、警戒心など微塵も感じられない。戦場に身を置く刀剣男士にあるまじき無防備さだった。いつもはきっちりと身なりを整えているのに、いまは髪も服も乱れていることで、余計無防備に思われた。
     その上、無邪気だ。福島の口元はちょっぴり緩んでいて、小さく笑っているようにも見える。たいへんあどけなく、愛らしさすら感じられた。いまにも口の端から涎を垂らしてしまいそうな、あるいはまあるい鼻提灯を出しかねないような、いとけない無邪気さがあった。
     そういった無防備さも無邪気さも、ふだんの伊達男然とした福島の雰囲気からはかけ離れたものだった。だから長谷部は呆気に取られたのだ。
     自分は幻覚を見ているのか、あるいは別の男士を福島と間違えているのではないか。そう考えて福島をまじまじと見てみたが、目の前の光景は夢や幻ではなく確かな現実で、すやすやと眠っているのは福島光忠に違いなかった。
    「どうしたへし切、まぬけに口開けて」
     日本号が怪訝な面持ちで長谷部に問う。いつもの長谷部ならばまぬけと言われればまぬけと返すところだが、いかんせん、いまはおそろしく動揺している。日本号に悪態をお返しするでもなく、本来の目的である審神者からの言伝を教えるでもなく、「日本号、それは、何だ?」と問い返した。
    「それって……これか?」
     日本号は福島を指さして言う。長谷部は「そう、それだ」と頷いた。それだのこれだの失礼な呼び方をされているとも知らず、福島は眠りを堪能しつづけている。
    「可愛いだろ、これ」
     日本号はにんまりと笑いながら、そう言った。
    「……は?」
     予想外の言葉に、長谷部は目を瞬いた。
     可愛い、とは。可愛いとは、いったい。
     きょとんとする長谷部を見て、日本号はくっくっと笑いを漏らす。とても楽しそうだ。
    「お前が知っている福島光忠とは違うから驚いたか? だが、俺とふたりきりのときは頑是なくてかしましいんだ、こいつは。へし切や他の奴らの前とはまるで別の刀だぜ。いまは眠ってるからおとなしいがな、起きてる間は号ちゃん号ちゃんと鳥のさえずりみたいに繰り返して、うるさいのなんの。参るぜ、まったく……」
     言って、日本号は福島に手を伸ばし、顔にかかっていた前髪を静かに払ってやった。
     長谷場はいっそう驚いた。福島が日本号とふたりきりのときは別人のようになる、という事実もそうだが、それ以上に、福島に触れる日本号の手つきの優しさに驚愕していた。
     日本号の指は武骨なのに、福島の前髪を払うそのときには、信じられないぐらいの優しさを帯びていた。指先から愛情が滲んでいるようにすら思われた。
     指だけでなく、声も優しかった。言葉の上では「うるさい」だの「参る」だのと言うくせに、ずいぶんと柔らかい語気だった。尖ったところがなく、まるくてあたたかい響き。笑いを含んだ語尾には、指先と同じように愛情が滲んでいた。
     それに、目つきもまた優しい。福島を見下ろす日本号、そのまなざしは、どう見ても愛しいものに向けるそれだった。福島光忠という刀が可愛くてならない、と雄弁に語る瞳である。
     ――そうか、日本号は福島光忠という刀を心底から愛してるのだな。
     長谷部は確信した。日本号から言葉として聞かされずとも、日本号の手つきや声やまなざし、あらゆる仕草から、福島へ向ける愛情が窺えた。
     そもそも、自分の脚を枕にして眠ることを許してやっている時点で、日本号が福島を深く愛していることは疑いようがなかった。
     日本号は気位の高い刀だ。自身が天下三名槍の一本、小三位の位持ちであることに誇りを持っている。そのため、蔑ろに扱われることを嫌うのだ。
     そんな日本号が、枕になっている。しかもその状況に腹を立てていない。むしろ上機嫌だ。よほど福島を愛していなければ、そんなことにはならないだろう。
     ――日本号がそこまで想いを注ぐものがあるとは、知らなかった。
     長谷場は何やら軽い感動を覚えて、それでつい、
    「愛しているんだな」
     と、口を滑らせてしまった。
     日本号が目を見開く。
     長谷場は気恥ずかしくなり顔をそむけた。きっと日本号は「柄にもないことを言うな」とからかってくるだろう、そう考えてのことだった。
     ところが。
    「……そうだな、俺が福島に抱いている感情は、お前が燭台切に向けているものと同じだろう」
     予想外に、日本号は長谷部の言葉を肯定した。今度は長谷部が目を見開く番だった。
     長谷部は日本号に視線を戻す。
     日本号は福島の頬を撫ぜていた。前髪を払ったときと同じく、優しい手つきだった。愛情が灯った指先は、はっと息を呑むほど美しい。
    「お前にとっちゃ燭台切光忠こそが可愛い光忠なんだろうが、俺にとっての可愛い光忠は、こいつだよ」
     眠る福島を見下ろす日本号は、微笑んでいた。その微笑みは信じられないほど優しく、愛情深かった。美しくしとやかな笑みだ。日本号がそのような優しさと愛に満ちた表情を浮かべるのは、初めてのことだった。少なくとも、長谷部は初めて目にした。日本号がそのようは微笑みを形作れるなど夢にも思わなかったから、ほんとうに驚いた。
     優しさも愛も、光を纏った美しい感情だ。だから、いま、日本号は美しかった。暗く静かな夜の中で、日本号が福島に向ける綺麗な心が、たおやかにきらめいているのだった。
     あまりの美しさに、長谷部は圧倒された。きっとこの夜の中で、この日本号という刀こそが、いっとうに美しい。そんなことすら、本気で思った。
     だが、その美しい感情を注がれる福島光忠その刀は、何も知らず眠りこけている。それはなんだか、とてももったいないことのように思われた。せっかくとても綺麗なものを与えられているのに、それを知ることがないなんて――。
    「で、へし切、何の用があって来たんだ? 主から何か言伝があるんだろう?」
     日本号が顔を上げて、長谷部を見ながら訊ねる。そこで長谷部はやっと正気付き、「明日の出陣だが、部隊の編成が変更になって……」と審神者から託された言伝を日本号に伝えた。
    「承知した。主にもそう伝えといてくれ」
    「ああ、わかった」
    「それと、これのことは誰にも言うなよ?」
     日本号が再び福島を指さす。福島は、ううん、と小さく身じろぎしたが、目を開けることなく眠りつづけた。
    「……俺もそこまで冷淡ではない。何も見なかったことにする」
    「そうしてくれると助かる。光忠のためにもな」
    「光忠のため? お前が福島のそういう一面を他の者に知られなくないだけではないのか?」
     長谷部は揶揄を含んだ口調で言った。
     しかし日本号は恥ずかしがるでもなく、にやりと笑って、
    「俺は別に構わねえよ、光忠が可愛いヤツだって知られても。どこの誰に知られようとも、結局のところ、こいつが自分からこんな姿を惜しげもなく晒すのは、俺の前だけだからな」
    「惚気か」
    「惚気だよ」
     長谷部が呆れ顔で言うと、日本号は恥じらいもなく認めてみせた。
    「くくっ、可愛い『光忠』を他のヤツに知られたくねえのは、へし切、お前のほうじゃねえのか? お前は独占欲が強い性質だろう」
     日本号が反撃だとばかりに長谷部に揶揄を返す。図星を突かれた長谷部は、顔がカッと熱くなった。
    「うるさい、放っておけ!」
    「はは、否定はしねえか」
    「黙れ!」
     長谷部は乱暴に障子を閉めて、日本号の部屋を後にした。
     ――くそ、これだから嫌なんだ、あいつは。
     長谷部は不機嫌を露に廊下の本丸をずんずんと進む。夜気の冷たさも気にならないぐらいに苛立っていた。
    「長谷部くん、どうしたんだい? そんなにいらいらして……」
     耳慣れた声に名前を呼ばれて、長谷部は立ち止まった。振り向けば、果たしてそこには燭台切光忠がいた。長谷部にとっての可愛い光忠である。
    「……日本号に主からの言伝を伝えに言ったら、不愉快なことを言われた」
    「ふうん。きみたちは仲がいいよね」
    「はあ? どこがだ」
    「喧嘩するほど何とやら、と言うだろう」
     燭台切はくすくす笑っている。どうやら燭台切も長谷部をからかっているようだ。
     長谷部が顰め面をすると、燭台切は「そんな顔しないの、せっかくの男前が台無しだよ」と言って、長谷部の顔を両手で包んだ。黒い手袋に包まれた手からは体温など伝わらないが、それでも、燭台切に触れられるのは心地いい。とげとげとしていた心がいくらか丸くなるのを感じて、我ながら単純な心の作りだな、と長谷部は密かに自嘲する。
    「これから主に報告かい? 今夜の仕事はそれで終わり?」
    「ああ、後は何もすることがない」
    「なら、報告を終えたら、僕の部屋に来るといい。しっかり暖めてあるから。……それに、お望みとあらば、甘やかすのでも、甘えるのでも」
    「……お前は俺の機嫌を取るのが上手い刀だな」
    「ふふ、愛しているからね」
     燭台切は「好き」や「愛している」をためらわずに口にする刀だ。そういうところが、まぶしいと思う。燭台切の刃よりも、瞳よりも、その有り様こそがいっとうに眩い。
    「燭台切。お前、いまこの場で俺に甘えろと言ったら、どうする?」
     長谷部が訊ねると、燭台切は困り顔になって、「それはちょっと許してほしいかな」と答えた。
    「ここだと、いつ誰に見られるかわからないだろう。そんな場所で、その、情けない姿を見せるのは、ね……」
     燭台切は彼らしくない歯切れの悪い口調で言った。
     福島が日本号の前でだけ頑是ない姿になるように、燭台切もまた、長谷部とふたりだけのときには、子どもっぽく甘えたり我儘を言ったりする。ふだんの鷹揚で聡明な男前の姿からはかけ離れたその有り様は、長谷部の愛おしむところだった。しかし燭台切にしてみれば、そんな姿は「情けない」ものであり、長谷部以外には折れても見せたくないものだ。
     ――福島も、きっと燭台切と同じなのだろうな。
     日本号の脚を枕にして眠る姿を長谷部に見られたと知ったなら、福島は顔を真っ赤にすることだろう。想像すると、少し笑えた。
    「長谷部くん? 何を笑っているんだい?」
    「燭台切、お前、福島と似ていると思うぞ。やはり同じ光忠が一振りだな」
    「は? ……待って、どうして急に福島くんの話になるんだい?」
    「そろそろ兄と呼んでやってもいいんじゃないか? 『お兄ちゃん』は無理でも、『福島兄さん』ぐらいなら問題ないだろう」
    「はあ⁉ ちょ、ちょっと待って、長谷部くん、何で急に福島くんの味方になってるわけ⁉」
     燭台切が目に見えてうろたえて、焦った声を出す。その表情には驚きばかりでなく、いくらか拗ねたような色もあった。余裕が消えて、いささか子どもっぽい姿。あんまりにも可愛いので、長谷部の頬は緩む。
     可愛い可愛い光忠を見つめて、長谷部は言う。
    「俺の可愛い光忠は、お前だけだよ、燭台切」
     きっと日本号も、同じ言葉を福島に向けているのだろうと、そう思いながら。

      * * * 


    「ん、んん~……号ちゃん、いま何時ぃ……?」
     ふいにもぞもぞと動き出したかと思ったら、福島はのそりと体を起こした。いかにも億劫そうに起き上がったから、まだ眠いのだと窺える。
    「起きたか、寝坊助。そろそろ日付が変わるぞ」
     日本号は福島の頭を撫でてやりながら答えた。
    「うっそお、俺、そんなに寝てたあ……?」
    「今日はかなり戦ったし、疲れてたんだろ。布団敷いてあるから、もうこのまま朝まで寝ちまえ」
    「ええ~、号ちゃん優しい~……好き、愛してるう……」
    「はいはい、知ってる知ってる」
     福島は半分眠ったような瞳で笑いながら、日本号の頬に口付けた。日本号は苦笑しながらそれを受け入れる。素面でも酔っ払い顔負けの胡乱な振る舞いをする困った刀だ。しかし日本号はすっかり福島の扱いに慣れているし、福島にこんなふうに絡まれるのが満更でもない。何せ、可愛い光忠なので。
    「寝る前に服だけ着替えろよ、この前置いてった浴衣ならちゃんと洗濯してある……おい、どうした、光忠?」
     福島が熱っぽい瞳で見つめてくることに気がついて、日本号は首を傾げる。
    「いやあ……号ちゃん、ほんっとに綺麗だなあ、と思って……」
    「綺麗……?」
    「綺麗っていうか、美しい……」
     うっとりとした様子で福島が言う。
     日本号は返答に困った。
     本体である槍ならば、綺麗だとか美しいとかいう言葉で賞賛されたことは数え切れない。だが、いま福島が美しいと讃えているのは、槍ではなく、刀剣男士としての器のほうだろう。
     日本号とて、男士としての自分の見目が優れているという自負はある。あるのだが、それは「格好良い」「雄々しい」と表現されるものであって、「綺麗」「美しい」という言葉は少し違うのではないか、と思う。
     だが福島は「美しいよ、号ちゃんは」と断言する。何の迷いも疑いもない声で。
    「号ちゃんは、自分の美しさを知らないんだね。困ったヤツだなあ、まったく」
    「お前にだけは困ったヤツだと言われたくねえんだがなあ……」
    「うふふ、号ちゃん。号ちゃん。ごーうちゃーん」
     福島は上機嫌に笑いながら日本号に抱きついた。
    「どうした、急に機嫌良くなって」
    「へっへっへー、俺は号ちゃんがいればいつだってゴキゲンだよ。なんたって、日の本一の槍がこの手の中にあるんだからさあ」
     福島は日本号に頬ずりをした。他の刀にこんなことをされるのはごめんだが、福島が相手となると、無条件に許してしまう日本号である。頬ずりをしてくる様が可愛い、とさえ思ってしまう。
    「号ちゃん、もうぜーったいに手放さないからなー! 正則みたいな失敗はするもんか!」
    「はいはい、手放さないようにしっかり捕まえといてくれよ」
     たったいままで眠そうにしていたのに、急に元気になったな、と思いつつ、日本号は福島の頭をぽんぽんと撫でてやる。
    「当然! 主が号ちゃんをどこか遠くへやろうとしたって離さない!」
    「主がそんなことをするとは思えねえが……ま、そのときはよろしく頼んだ」
    「頼まれた! へへ、いまはこうして男士として顕現してるからね、万が一号ちゃんが連れ去られそうになって、この足で走っていって、この腕で取り返してやる」
    「……お前は、なんつーか、前向きだよな。根明というか」
     福島はすでに焼けた刀だと聞く。そのわりに、ふだんの言動には陰りがない。憂いや悲観を帯びることなく、健やかに振る舞っている。戦場でも本丸でもそうだ。
     それは燭台切にも言えることだった。焼けてなお、明朗で気高く力強い刀。もしかすると、どんな苦難に見舞われても明るい心根を失わないことが、光忠という刀たちが持つ強さなのかもしれない。
    「そういえば、今日の出陣で、俺、一番槍を取ったんだけどさ」
    「ああ、らしいな。やるじゃねえか」
    「へへ、ありがと。……号ちゃん差し置いて一番槍取っちゃったなあって、なんか照れ臭いというか、そわそわしちゃったんだけど。でも、俺が一番槍取ったって、号ちゃんはいつまでもずっと俺の一番槍なんだよなあって……」
    「……ん、んん? 何だそりゃ? どういう意味だ?」
     福島の言葉の意図がわからず、日本号か顔をしかめる。
     すると福島は、悪戯っぽく笑いながら、
    「いちばん最初に俺のハートを射抜いたって意味で、一番槍」
    「……は」
    「ふへ、俺はこれからもずーっと、号ちゃんにハートを掴まれたままだからね……」
     かくん、と福島の頭が揺れた。かと思うと、次の瞬間、その体からふっと力が抜ける。日本号にもたれかかった福島は、再び眠りについていた。
    「……やっぱ、お前のほうがずっと困ったヤツじゃねえか、ちくしょう」
     福島への愛おしさが体じゅうで暴れ回っているような感覚に襲われながら、日本号は福島の髪をわしゃわしゃと掻き乱した。せっかくの美しい髪を乱雑に扱われているのに、福島は目を覚まさない。もっとも起きていたところで、「もう、やめてよ号ちゃん」と笑うだけだったのだろうけれど。
    「ほんっと、困ったヤツ……」
     日本号は福島の寝顔を見つめながら、ふ、と笑った。優しい笑顔になっていることは、自覚していた。福島に対しては、どうしたって優しくなってしまうのだ。
    「さすがに着替えさせるのは手間だから、このまま布団に運ぶが、朝起きて文句を言うなよ?」
     福島に声をかけるが、もちろん返事はない。日本号は福島を抱え上げる。成人した男の姿を取っているだけあって、重い。だが、その重さすら愛おしい。それほど福島に入れ込んでいるのだ、日本号は。
    「心を射抜いたって意味なら、俺にとっての一番槍だって、ずっとお前だよ、光忠」
     ずっと心を掴まれたままなのも、同じことだ。
     日本号は福島の額にそうっと口付けをして、言った。
    「俺の可愛い光忠は、お前だけだよ」
     もしかしたら長谷部も、同じ言葉を燭台切に向けているのかもしれないと、そう思いながら。
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