イカロスは知らない「ちょっぴり寄り道してから帰ろうか、常闇くん」
ホークスはいたずらっぽく笑いながらそう言った。本来の年齢よりずっと幼く見える、無邪気な笑い方だった。ヒーローとしてのコスチュームではなく、ラフな私服姿だから、よけいに幼く感じられるのかもしれなかった。
「せっかく海の近くに来たんだから、見に行こうよ」
ホークスがあんまりにも楽しそうに誘うものだから、常闇は断れなかった。嫌だと言ったら、彼を酷く傷つけてしまう気がしたのだ。
よく晴れた初夏の午後だ。健やかな青空とさわやかな風が心地いい。黒影がしょんぼりとしてしまいそうなほど、屈託なく明るい世界。その中で、ホークスのあどけない笑みはやたらと眩しく思われた。常闇は思わず目を細める。
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