どっちもどっち いいところで会った飲みに行こう。露伴は駅前で顔を合わせた知り合いにそう言われて強引に手を引かれた。いいところだと判断したのは知り合いの方である。すべてあちらの都合で、露伴はさっさと帰って仕事がしたかったのでタイミングは最悪だった。
「いつもの居酒屋でいい?」
「はあ、どこでもどうぞ……」
「え、じゃあホテル行く?」
「居酒屋で」
この男がしょうもない冗談を言う時は大抵落ち込んでいる時である。適度に恩を売っておいて、何か漫画のネタになりそうなことでも引き出そう。そう決めて、露伴は本日の予定を変更した。
馴染みの居酒屋は全席個室で、あまり周囲に気を使わなくていい。平日の早い時間だったのもあり、かなり空いていた。
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