930年 生まれ持った色と白が混じり薄紫色になった髪に、櫛を通す。クソジジイのようにハゲることはなかったが、俺も随分と年を取ったものだ。
「これ、イクスさんに渡してもらえる?」
シチロウから手渡された紙袋には、茶葉の瓶が複数入っていた。重たいはずだ。ひとつ取り出してラベルを見てみると、「お肌ツヤツヤ用ブレンドティー 186ver」とあった。
「また新しいブレンドを作ったのか?」
「僕は、アンチエイジングなんてする必要ないって思うんだけどね……まぁ、『乙女心』を否定する気もないけど」
「俺と『デート』する前に飲まないと、意味がないんじゃないのか?」
「君との『デート』で、僕の力は借りたくないらしいよ」
ことのはじまりは、彼らがまだバビルスの2年生だったのころ、「心臓破り」をしたときだ。
1283