おやすみ兄貴湿気と熱気が身体中を舐めるように自分を取り巻いている。
現実と夢の間をふわふわと漂っていると、控えめに肩を叩かれた。
「兄貴」
大きな手が私の肩を掴み、小刻みに揺れると、その優しい強さで徐々に覚醒していく。
起きているよ、と伝えるようにくぐもった声を出したが、まだ目を開かないでいると、先程よりも少し大きな声で名前が呼ばれる。
「ラーマ」
ここしばらくの間で一番聞いた声だ。重い瞼を押し上げると、顔を覗き込まれていた。案ずるような暖かなブラウンが、至近距離で瞬いた。
「ああ…アクタル…すまない」
今日も彼の仕事が終わったら食事をとる約束をしている(約束というより、そういう日課になっている)。
もしかして、彼を待たせてしまったのだろうかと謝る。
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