昔のお話昔、少女アルシアは独りでした
しかし、独りで居ることの寂しさを隠し、誰にも己の弱さを見せたことはありませんでした。
いつもそう言って笑い、誰よりも強く在ろうと彼女は誓っていました。
でも、それでも寂しさはふとした時に訪れその度に苦しくなる胸を押さえつけ、知らぬふりをしていました。
そんな時、国の王子セリウスに出会いました。
彼は、少女に一目惚れをし何度も何度も彼女の居る神殿に通い、街の外の事を話してくれました。
彼女も段々と彼が会いに来てくれるのを楽しみにしていました。
軈て、セリウスとアルシアは結ばれました。
しかし、神はそれを赦しませんでした。
翌年、彼女は神の供物として選ばれたのです。
彼女は炎巻く祭壇に立たされ、その時を待ちました。
炎が彼女を包み込もうとしたその時、炎を切り裂き、彼女の体を引き戻す彼の姿がありました。
彼は必死に彼女を守ってくれました。
しかし、彼は行き過ぎた戦いの中で神を殺してしまいました。
刹那の静寂、次に彼に向けられたのは神の怒りでした。
神殺しの罪と神々の恐れは大神ゼウスの雷霆と共に刃となり、彼の体と魂を貫き粉々に砕いてしまいました。
そして神々は、神殺しの力を封じるために彼の魂の一部を召し上げ神の一人とし、残った魂の欠片は再度集まり力にならぬようあらゆる世界へ散らしてしまいました。
神になった彼は、十六夜月の運行と月が促す狂気の神となり常人が目を合わせれば狂ってしまう様になりました。
彼女は目の前で別人になった彼と目を合わせてしまい、狂い苦しみ自ら炎の中へ身を投げ命を絶ってしまいました。
この事件を機にエーリスの国は衰退し隣国より攻められ今は亡き国となり、その後セリウスがどうなったのかは知られていない。