ぬいちね chu 合宿場から祭りの手伝いのために帰ってきた比嘉中レギュラーの仲間が――知念が、本土に帰ってしまう。不器用な不知火には、遠距離恋愛になってしまう恋人になんて告げれば良いか分からず、別れの瞬間が訪れるのを待つ事しか出来ずにいた。
すると、知念が目の前にやってくる。その顔を見上げて名前を呼ぼうとすると、彼はしなやかな動作で体を降り、不知火の頬を撫でた。キスをされた、と気づいたのは唇が離れた時だった。他の仲間たちもいるのに? ポカンとする不知火の頭を掴み、知念は顔を覗き込んでくる。
「俺のこと、忘れるなよー」
浮気するな、と釘を刺しているらしい。そんなことするかよと心の中で毒吐くとなんだか涙が溢れてきた。寂しいから泣くなんて女々しくてバレたくなくて、背中を向ける。
「それじゃ、行ってくるさぁ」
ポンポンと背中を叩かれ、振り返れば彼は手を振っていた。
「知念先輩、あそこでキスするなんて度胸あるさぁ。キャプテンなんて青筋立ってたよ」
「帰ってきたらゴーヤーかや」
「んー。でも知念先輩とともくんが付き合ってるの、みんな知ってるあらに」
「……じゅんにか?」
「ともくん、分かりやすいからやー」
幼馴染が少し影のある笑顔を浮かべたので、不知火は震えてしまった。