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    ななほう

    おかまゆ・特撮・エムマスなどを描きます。

    お題箱あります https://odaibako.net/u/pyonpetach

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    ななほう

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    230603 pictSQUAREで開催の男女CPオンリー「第5回ラバーズ・コンチェルト」にて公開のおかまゆSS(全年齢)です。
    オカリンの実家の青果店にテレビの取材がくる話。
    執筆にあたり、AIのべりすとを併用しています。

    燃える看板娘俺の幼なじみは今日も甲斐甲斐しく働いている。

    「へーい!いらっしゃいいらっしゃい!今日はね~、旬のキャベツが入ってるよ!柔らかくて美味しいよぉ!」
    「まゆりちゃんが言うなら間違いないわね、いただこうかしら」
    「まいどあり~!オカリン、1つおねがい!」

    俺は店の棚からキャベツを取り出して袋に入れ、まゆりに手渡す。

    「まいどあり」
    「ありがとオカリン、はいどうぞ!」

    まゆりは流れるように常連のおばさまから代金を受け取り、商品とおつりを渡す。別のおばさまから大根を半分にしてほしい、と言われれば店に据え付けられている包丁を振るって一刀両断にする。

    「はーい!いくよ〜!危ないから離れててね!」

    ガンッ!

    ザクッ!

    キャベツだろうがかぼちゃだろうがパイナップルだろうが、いかなる青果もまゆりの前ではあっさりと客の注文通りに分割されていくのだ。まるで豆腐でも切っているかのように。

    「きゃあ~!出たわね!十八番!」

    まゆりがこれをやり始めると常連のおばさま方は黄色い声を上げて喜ぶ。この光景を見るためにわざわざ少し離れた地域から買いに来る者もいるというくらいだ。その腕前はすでに熟練の域に達し、すっかりうちの店の名物である。

    「えっへん!これくらい朝飯前なのです!」

    誇らしげに胸を張るまゆりだが、これがなかなかどうして侮れない。まな板の上に置かれた食材はすべて同じ大きさで切り揃えられている。さらに、切った後も断面が美しく整っており、見た目にも美しい。

    「じゃあおばちゃま、また来てくださいねぇ」
    「もちろんよ」
    「まゆりちゃん、倫太郎ちゃんと仲良くね」
    「はぁ~い」
    「どうも……」

    そう言って愛想よく手を振りながら常連客を見送るまゆり。もう立派な看板娘だった。今うちの店頭販売はまゆりの愛嬌でもっていると言ってもいいかもしれない。
    ****
    まずいことになった。
    とても面倒なことになった。
    だが……致し方あるまい。

    まゆりはすでにラボに先についていて、小型のミシンでコス衣装の制作作業をしていた。ミシンはこの辺りで買った中古品で刺繍などはできないものだが、縫うだけなら扱いがしやすくて良いらしい。

    「あ、オカリン!オカエリン♪」
    「あぁ」

    まゆりは俺を見つけると作業の手を止め、嬉しそうに微笑んだ。俺はこれからこんな可愛いこいつに非常に面倒な事態になったことを報告せねばならない。

    「まゆり。来て早速だが、話がある」
    「うん、なぁに?」

    これから伝えることを言うために一度深呼吸する。頭の中を整理する。俺のそんな様子を見て、まゆりは怪訝そうな顔をした。

    「どうしたの?もしかして……悪いことなのかな?」
    「ある意味悪いと言うべきか……」
    「ええ……」

    一概には悪いと言い切れないことでもあるが、早めに言ってしまいたい。

    「うちの店にテレビの取材が来ることになった」
    「へぇ!!」

    まゆりはとても驚いた様子だった。目を丸くして、口元に手を当てている。

    「すごいね……!どうして?この前お店で始めたかぼちゃコロッケのこと?」

    うちの店では、種類は多くないが野菜を使った惣菜を置いている。少し前からかぼちゃのコロッケを置くようになったのだが、今回取材されるのはそっちではないのだ。

    「先方が……お前を取材したい、と言ってきている。事前にお前の許諾を取りたいのだと」
    「え、まゆしぃを……?」

    まゆりはきょとんとした顔になる。無理もない。いきなりこんなことを言われても困惑するのが普通だ。

    「ああ。街の看板娘を訪ねるロケでお前の話を聞きたいのだそうだ。あの……野菜を切るやつをやってほしいらしい」
    「ふむぅ……」

    少し前までならご近所の人々のみが知るちょっとしたお楽しみ程度のはずだったあのパフォーマンスも、評判が広がるうちにだんだんと有名になってしまったらしく、どこかのタイミングでテレビ局の耳に入ることになったのだろう。写真や動画の撮影、それらのSNSへのアップはしないようにとお願いしてきたというのにどこで漏れたのか……。

    「うぅーん……オカリンはどう思う?」
    「正直困っている」

    まゆりの意見を聞かないうちから勝手に断るわけにもいかない。

    とはいえ、俺としてはまゆりのことをあまり人前に出したくないというのが本音である。まゆりは可愛い。それはもう超が付くほど可愛い。そのうえ気立ても良い。その魅力は例の遊園地のキャンペーン広告が公開された後「あの美少女は誰!?」と少し話題になったほどなのだ。
    あの時は指圧師などの関係者がまゆりの存在を公表しなかったおかげですぐ収まったのだが、今回はある程度個人情報が出てしまうため混乱を招いてしまう恐れがある。テレビに出たまゆりのキャプ画像の胸の部分だけを拡大して卑猥なコメントをつけて転載するようなやつが現れたり、チヤホヤされることを目的として勝手に撮影してなんたらチューブだのティックなんとかだのにアップするやつが現れたりなんかした日にはもう片っ端から訴えて法廷でぶちのめして判例を作ってしまうかもしれない、絶対そうする。絶対にだ。

    「まゆしぃが出た方が、お店は助かる?」
    「どうだろうな」

    うちは近隣の飲食店との取引がメインなので、正直店頭に客が増えるかどうかはあまり気にしていないところがある。急に惣菜の需要が増えても対応しきれないし、まゆり目当ての野次馬ばかり増えて対応に追われ利益は出ないなどの事態になったりしたら目も当てられない。こんなに可愛いまゆりに一方的な感情を募らせてストーカー化する不届き者が現れるかもしれないし!

    「看板娘ロケって言ってたよね。誰が来るのかなぁ」
    「"ユトリズ"だ」
    「ユトリズ!?もりちゃんとビリーが来るの!?」
    「どちらか片方かもしれんが、まあ、そうだな」
    「うわぁ〜」

    ユトリズは最近関西からこちらへ進出してきた若手漫才師のコンビだ。全国規模の賞レース決勝にも度々進出し、ツッコミのもりちゃんこと森川のいじられキャラで人気と知名度を上げてきている。

    「ユトリズが来るってことは……朝の"ホッピング!"だよね」
    「そうだ」

    "ホッピング"は全国放送の情報番組だ。他の同時間帯の番組と比べて視聴率がずば抜けて高いということはないのだが、暗いニュースは扱わずフットワークの軽い若手のお笑い芸人を多数集めてグルメや便利グッズなどの情報を絡めた大喜利を展開する独自のノリでお笑いファンを中心に話題になっている。だからこそこの番組を監視しているタチの悪いやつは実在するだろうし、そんなやつらの目にまゆりが触れることが俺としては我慢ならない。

    「そっかぁ……まゆしぃのお友達が好きなんだよね、ユトリズ。誘ったら喜んでくれるかなぁ」
    「お前、受ける気なのか?」
    「今ならマスクして出てても変じゃないだろうし、ちょっとくらいなら……大丈夫じゃないかな」
    「そうか……」

    まゆりは普段から無防備だし、その自覚がないのだろう。だが、こいつは自分が思っている以上に目立つ容姿をしているのだ。そんなまゆりに何かあったりしたら……俺はもう……。しかし、まゆりが良いと言っていることを否定するのも気が引ける。

    「わかった。お前がそこまで言うのであれば、俺も反対しない。だがこの先何か危ないことがあったら必ず言うのだぞ」
    「オカリンは本当に心配性だね……何にもないよ」
    「いいか?お前は俺の人質なんだ、無闇に目立つことは許さんぞ」
    「あっ……うん、そうだね。"機関"に見つからないようにしないとね?」
    「わかればいい」

    まゆりは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに嬉しそうに微笑んでくれた。よかった。とりあえずこれでひと安心か。****
    そしてあっという間に取材の日が来た。

    俺とまゆりは店のユニフォームとも言うべき緑黄色野菜色のエプロンを身につけ、ユトリズとクルーが来るのを待つ。話をややこしくしないために白衣は着ずに「鳳凰院凶真」は封印し、一介の青果店のせがれとして応対することにした。まゆりが目立たないよう俺がキャラを食うという案もないではなかったが、それで変にいじられるのも御免だ。あくまでも害のない、記憶に残りにくい薄い人間として接することにする。

    「まゆりよ、今日はどうしたらいいかわかってるな?」

    俺の隣で黒いマスクをつけて固まっているまゆりに声をかける。

    「うん……えっと、「まゆしぃ」じゃなくて、ちゃんと「私」って言うこと、オカリンの人質ってことは秘密にすること、マスクは取らないこと。あと、メイクイーンで働いてることも内緒」
    「うむ」

    看板娘の取材だというのにマスク着用とは……と言われるのではないか、という気もしたが、今はこういうご時世だ。おそらく大丈夫だろう。

    「そして……指圧師よ、個人的撮影の交渉は任せたぞ」
    『おっけ〜✨』

    まゆりが取材されることをラボメンに話したところ、なぜか指圧師が現場に来ることになった。まゆりと揃いの黒いマスクをつけ、使うアテなどないはずなのに無言でビデオカメラを回している。

    『椎名さんの"版権"はうちの編集部がもってるんだよ📸😤』
    『それはあのキャンペーンの写真の話だろう』
    『椎名さんを取材するならうちを通してもらわないとね😠それにしても、大手のマスコミの取材を間近で見られるなんて感激🥺勉強になりそう〜♪』
    『取材中はメールを送ってくるなよ。あとスタッフとはちゃんと口頭でやりとりするように』
    『了解🙆‍♀️』

    「指圧師のやつ、すっかりマネージャー気取りだな……動画なんて撮ってどういうつもりだ」
    「ユトリズのファンのお友達、都合が悪くて来られないって言ってたから……まゆしぃが撮影してってお願いしたの」
    「そうだったのか」

    個人的なものとはいえ、そんなことをしていいのだろうか……というようなことを考えているうち、まずはスタッフが来た。タレントが来る前に段取りを確認しに来たのだろう。

    「……行くぞ」
    「うん」
    ****
    簡単な打ち合わせと店先等の映像素材を撮り終えたタイミングでユトリズがやってきた。

    「こんにちはぁ、ユトリズと申しますぅ。今日はよろしくお願いします〜」

    ユトリズは俺たちに関西弁のイントネーションで軽く挨拶した後、スタッフと最後の確認に入っていった。

    「どうしようオカリン、本物のユトリズだよ、もりちゃんとビリーだよ」
    「ああ、テレビで見るよりも大きいな」
    「ほんとだねえ……」

    ツッコミの森川は長髪で縦にも横にも大きく、顔つきもいかついので黙っていると恐ろしげに見えるという特徴があり、こうして実物を見るとそれがよくわかる。しかし、打ち合わせ中のスタッフに対する人当たりはよさそうで、人懐こい大型犬のような印象だった。やはりあの人柄の良さが業界で可愛がられる秘訣なのだろう。
    一方相方のビリーはいわゆる「塩顔」の男で、すらりと背が高く細身な体躯に黒縁メガネがよく似合っている。最近はコンビのどちらかがメガネをかけているというケースが増えているよな……。

    「サインもらえるかなぁ……」
    「相手も忙しいからな。個別には難しいだろうが、この番組はいつも取材した店にステッカーを置いていくから、そこには書いてくれるんじゃないか」
    「そうだよね!」

    そうこうしているうちにユトリズ側の打ち合わせが完了し、いよいよ取材がスタートした。

    「ユトリズの"看板娘に会いたい"!今日はここ、豊島区の岡部青果店さんにお邪魔しています〜」
    「ここの看板娘さんは意外な特技があるようで!早速行ってみましょう」

    関西ではかなりの知名度を誇っていたというユトリズは、ロケも相当こなれているのかあれよあれよと段取りを進めていく。俺たちはそれに乗せられてあまり深く考える間もないままに無難に自己紹介をし、キャベツを一刀両断するまゆりの特技を披露し、同じことにチャレンジして派手に失敗する森川を見守り、番組ステッカーにサインをしてもらって店の柱に貼った。事前に心配していたようなボロが出ることはなく、後はうまく編集されることを願うばかりだ……。

    「というわけで、とてもユニークな看板娘さんでした!」
    「次はどんな看板娘さんに出会えるでしょうか?また来週〜!」

    怒涛の勢いで取材が完了し、ユトリズとスタッフ達は帰って行った。
    ****
    「ふぅ……」

    俺は一息つきながら、さっきまでいたユトリズが座っていた席に腰掛けた。

    「まゆり、疲れたか」
    「うん、ちょっとだけ……」

    まゆりはまだ興奮冷めやらぬ様子で、個人的に撮ってもらうことができた記念写真を眺めている。

    「もりちゃんもビリーも、スタッフさんも優しかったね」
    「そうだな」

    ああいう業界の連中は取材先の素人を雑に扱うという印象がないではなかったが、少なくとも今日来たスタッフたちは慌ただしさはあったものの概ね丁寧だった。朝の情報番組で放送されるものということもあるだろうが芸人たちも俺たち相手に下ネタなどは言わず、むしろつつがなくロケを進行できるよう気配りをする様子に少しファンになってしまいそうだ。

    「萌郁さんもありがとう」

    指圧師は無言のままこくり、と頷いた。

    『動画、DVDにして持っていくね♡』
    「俺じゃなくてまゆりにメールしろよ、ていうか喋れ」
    『てへぺろ(*・ε・*)』
    「だから……」
    「ふふふ……」

    まゆりは俺と指圧師がやりとりしているのを眺めながら楽しそうに笑った。

    実に目まぐるしい1日だったし、心配ごともあるが……まゆりが幸せそうなら、とりあえずはよかっただろう。
    ****
    後日……いよいよテレビで例のロケが放映されるということで、俺たちは朝からテレビの前に集合した。

    「いつになるかな?」
    「慌てるな、この番組はオープニングトークが長いのだ」

    番組がスタートし、まずはオープニングのトーク。出演者達がテーマに沿って自分のおすすめという形で商品を紹介していく。ユトリズはうちの店のコロッケの話はしなかった……まあ、そういう紹介のされ方をするほどのものではないし、本題はあくまでもまゆりだしな……。

    「うーん、ドキドキするなぁ……」

    俺もまゆりも、緊張しながら番組を見守っていたのだが。オープニングの大喜利トーク、スタジオで芸人が料理を実際に作って振る舞うコーナー、全国ニュースとプログラムが進んでいくが一向に放送される気配がない。

    そして……。

    「それではまた明日も元気にお会いしましょう!」
    「ちょっとちょっと!俺らのコーナーカットですか〜!?」

    森川の情けない声を最後にその日の放送は終了してしまった。結論から言うと、少なくともその日は看板娘のコーナーは放送されなかったのだ。ゲストに来ていた破天荒な芸風の芸人コンビがスタジオで長時間大暴れし、スタッフ側もそれを面白がったため時間が押して一部のコーナーがカットされたらしい。この番組はアクシデントを面白がる傾向にあって時々こういうことが起こるのだ……。

    「スタッフさん、放送されるなら今日だって言ってたよね」
    「ああ……大きな事件があれば予定が変わる可能性もあると聞いていたが、まさかこんな理由でカットされるとは」

    看板娘のコーナーは時間も短く、商業的な何かが絡んでいないから絶対に放送しなければいけないという縛りもなくてカットしやすかったのだろう。次の週に延期ということもないままお蔵入りということになるかもしれない。

    「うーん、ちょっと残念かも……」
    「まあ、ラボメンやお前の友達には指圧師の撮影していたものを見せればいいんだし、そうしょげるな」
    「ふぇ〜ん」

    まゆりは少ししょんぼりしていたが、俺の方は安堵していた。なにしろ俺の大切なまゆりを衆目に晒すことにならなくて済んだのだからな!

    その後も俺たちはこの番組をチェックしていたが、次の週には何事もなかったかのように別の看板娘が紹介されていて、ついにまゆりを取材したVTRが電波に乗ることはなかった。

    後日、別のトーク番組に出演していたユトリズがまゆりの一刀両断したかぼちゃの写真を披露しながら「諸事情でお蔵になってしまった、可愛いお嬢さんが店先で野菜を一刀両断する青果店」の話を披露し、その話だけがお蔵入りした理由も含めて一人歩きした結果一種のネットロアのようなものになってしまうのだが、それはまた別な話である。
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