第一改変 たすけて
確かにそう聞こえた。
私は私の家族を失い、正気では無かったのかもしれない。
もし私が正気であったなら、母の遺体を見つけてすぐに警察へ向かっていただろう。
なのに私はそうしようとせず、何かに駆り立てられるように家中を探った。
1.
1997年8月20日、祖母が失踪した。
近所にある神社の掃除へ出たきり、行方が分からなくなったのである。
その日を堺に、私の家では奇妙な現象が起こり始めた。
妹のリノは「どこかから声が聞こえる」のだと言い、母は「勝手に椅子が動いた」と主張した。
私と父も天井裏からの奇妙な物音を耳にする事が度々あった。
ギシギシと軋む張りの音に、時折カカカという何かを爪で引っ掻くような音が交じる。
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