As if in a dream (side:Wily)いつも夢に観るのは真っ赤な血の海と眠るように目を閉じた顔。
二度と目を覚ますことのない、母の死に顔。
『愛しているわ アルバート 幸せになってね』
書き置きに残されていたのはこの言葉だけだった。
今でも手元にある、あの写真に写っている私が玩具ロボットコンテストで最年少で最優秀賞をとった日から2年目の春、母は何の前触れもなく私を遺して逝った。
自ら手首を切って。
母と私は血が繋がっていなかった。
事故で夫になるはずだった男とその間にできたお腹の子を両方失い生きる希望を無くしていたときに捨てられていた私を拾ったらしい。
もともと母も孤児だった。
母の本当の子どもだったなら母は死んだりしなかったのだろうか・・・。
真っ赤な血の海。
私に流れていない母の血。
あの赤が目蓋の裏に焼き付いている。
誰よりも美しくて、頭も良く、何をやっても他人より抜きん出ていた母。
私たち親子に愚かな他人のことなど気にかける必要がなかった。
お互いだけを愛していた。
それなのに何故・・・。
せめて夢の中だけでも、もう一度母の笑顔が見たかった。
だから私は夢を保存する機械を作った。
しかし、何度試しても夢の中で母は笑ってはくれなかった。
母は私を愛していると何度も言ってくれたのに、私と一緒にいることは母にとって『幸せ』ではなかったのだろうか。
『幸せ』とはなんだろうか。
ロックマンを倒し世界征服を成し遂げることが今の私の叶えるべき夢だ。
その先に『幸せ』があると信じている。
ロボットは自分の幸せを掴むための道具だ。
私はロボットのために生きることはできないし、ロボットを愛することもできない。
私は『幸せ』にならなければいけないのだ。
そうすればきっと母は笑ってくれるはずだから。