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    げんちゃ

    @genkinahou
    肌色多め/流血グロ/体液描写/作業進捗などはここ。

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    げんちゃ

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    RED 加治地暁さん(@kasito_ori)とのお話。頂いたお話のリキ視点。
    URL↓
    https://twitter.com/kasito_ori/status/1450778429599596546?s=20

    ##RED

    痕跡/鍛冶場リキ交流SS昼食時、東棟の医務室に一等近いオフィスを覗けば。同期の見慣れたノアールの瞳とかち合った。
    困った顔で頭をかいて笑う加治地暁を半ば無理矢理腕を引いて、食事を摂りながらあれやこれやを聞き出す。特に真新しい情報は無いものの、世間話も交えてなんだかんだ、付き合ってくれる彼は人が好い。

    飲みかけのルイボスティーが、時間の経過を告げ、所在無さげに氷を溶かす。
    グラスの表面に浮かんだ水滴を爪の先で突くと、リキの指先へ吸い付いた。
    つい最近入局したばかりの局員の情報を会話の中で拾い集めて、頭の中でメモを取っていると、名前を呼ばれた。
    「左目、無事で良かったな」
    普段は現場でも冴え渡る声音を寝かし付けて、やけにとろとろとした速度で話す彼に物珍しさと小指ほどの興味が湧く。昼食後のインスリンが、彼の瞬きを重たいものにしているのだろうか。なにか考え事をしているようだ。
    「俺は、潰れちまったからさ」
    案外、無いと辛いもんだよ、と続いた言葉が苦々しさを含んでいるのを悟られないようにか、音階を上げた語尾に茶化された。声音に似合わず上がりきらなかった口角を見て、ようやっと、彼が自分の火傷痕とリキの裂傷痕とに、感傷を重ねているのだと気が付くと、面白くて堪らなくなってしまう。

    まあ。 なんて、カワイイヒト。

    「あら、心配してくれるんですか? それとも、同情ですか?」
    遠く、けれど近く、鮮明に思い起こすことの出来る捜査官としての記憶。
    膝を突き合わせたお互いの顔は、壁に貼られたエキシビションを通してでしか、変異体も能力も身近に感じられない民間人からしてみれば、どちらも大差無いのだろう。同情では無いのは、訊かなくてもわかる。
    「まさか」
    面を喰らった顔をしたのに、次の瞬間には先までの眠気に噛ませた瞼を懐かしそうに細めて笑う。
    返された声は、安堵にしては意地が悪くて、羨望にしては安らいでいた。
    加治地の組んだ腕が解ける。潰えた左目を覆い隠すように、顎から左頬にかけて大きい掌に包まれ、肘がテーブルに杖をつく。
    再び、さっきと寸部違わぬ声音で、声量で、名前を呼ばれる。
    「好きな人、いた?」
    今度、面を食らうのはリキのほうで。
    なぜ過去形の質問なのか、は彼が捜査官時代の鍛冶場リキを知っているからだ。
    それにしても、ジャケットの下に緊急時用と言えど銃弾の込められたピストルやら、血生臭いものを所持している男が、春に唆された新芽のようなことを言う。
    良く良く顔を覗いても、火傷痕で表情の読み難い男の顔は長閑を体で現したようすで、他意も悪意も無いのだろうと分かった。口元に着いたまま、全く気が付く気配の無いパンくずが、否が応にも目につくが。
    「私は、皆さんがスキですよ」
    アナタももれなく、と付け加えると、やはりただ何となく訊いただけなのか。
    「ふはっ、アイドルみたいなこと言うよな」
    普段書面と睨めっこしている眉根が柔らかく下げられ、気が抜けた返事にこちらも間抜けてしまいそうだ。
    「アナタこそ、女性に藪から棒は関心しませんね」
    「悪いな」
    少し懐かしくなったんだ、あの時……、と続いた言葉の先は。
    加治地の口に置いたリキの指先が、奪い取ってしまう。水分量の低い下唇を指先の空気がなぞる。
    口角のパンくずを爪で弾くと、右目を見開いたまま時間を停めていた加治地が、大げさに顔の前で手を振った。
    弾かれたゴミを目だけで追う彼を見届けて、手拭きで指先を拭い、喜色の笑みで席を立つ。
    「加治地ちゃん、今度はアナタのソレ、よく見せてください」
    触らせてくれたらスッゴク嬉しいですけど、と雑な縫合で引き攣れた自分の左目を指差して、加治地の呼称の仕方を真似する。遠回しに本音の興味を告げると、なぜだか、加治地は気まずいと、口をへの字にしてみせた。

    2人分のコップが置き去りにされたテーブルで、加治地は気が抜けたみたいだった。
    リキが店を出た後で、机の下の伝票が無くなっていることに気がついて。
    奢られてしまった、と口の端を引っ掻いた。
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