Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Lno_221b_ss

    @Lno_221b_ss

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    Lno_221b_ss

    ☆quiet follow

    続きはあとで/风无

    元宵節の例のイラストで気が狂って書いた风无でした。当時はまだ藍渓鎮で老君と无限が邂逅したところまで読めておらず、2人の関係を師弟だと勘違いしていたので、少しだけ手直ししました。
    帰宅後のお話を書きたくて書きかけて、もう数か月寝かせているのでいつかそのうち……。

    ***


     くん、とごく小さな力で頭を左斜め後ろへ引かれた。
     ちょうど湯呑みに唇をつけようとしていたところだったので、狙いの外れた飲み口から茶がこぼれそうになる。いや、なみなみと注がれていた中身は慌てて起こした湯呑みの動きについてこられず、少しばかりこぼれた。
     宙でふわりと球状にまとまった茶をさりげなく吸い込み、湯呑みを持ち直しながら无限は視線をちらと左肩の方へ流した。予想どおり、結んで後ろに垂らした自身の長い髪の、その先端を摘まむ指が目に入り、見ているうちにも二度、三度と房を引っ張られる。
     悪戯な指の持ち主を无限は無言で軽く睨んだ。风息、やめなさい。
     少し前までビールを水のように飲んでいたから、多少酔いが回っているのだろう。上体をゆるりと起こした风息は頬をほんのりと上気させていた。
     彼の右隣、つまり无限の左隣では、これまた機嫌良く酒を呷っていた玄离が、今は頭を垂れてうとうとしている。その背中越し、床に投げ出すように伸ばした右手で无限の毛先を弄びながら、唇の動きだけで「やだね」と応えるのが小憎らしいことこの上ない。

     頭を軽く左右に振るが、その程度では风息の手から逃れることはできなかった。滑りの良い手触りを楽しむかのように、青みがかった黒髪をくるりくるりと指に巻き付け、時折緩く引っ張る遊びが繰り返される。
     今はほぼ完全に武装を解いているから、手近に適当な金属が見当たらない。无限は湯呑みに口をつけたまま視線を宙にさ迷わせ、しばし思案した。
    「……ん?」
     ふと右足に違和感を感じて見下ろすと、すぐ傍に立っている老君が、胡座をかいた无限の右太ももを足の先でつついていた。というか靴下に包まれたつまさきが大腿筋にめり込んで少し痛い。このひとはさっきまで、窓の外で大輪を咲かせる花火を見ていたのではなかったか。
     なにか、と呟きながら顔を上げた无限は、面白くてたまらないといった顔の老君と目が合い胡乱な表情になる。
     なんだか楽しそうな遊びをしているね。
     邪気のない笑顔でそんなことを言われ、いや実際に声を出しているわけではなかったのだが視線と表情で雄弁に問い掛けられ、无限はじっとりと老君を見上げた。
     风息のこれは単なるちょっかいだし髪を引っ張られている无限は別に楽しくもないのだが、いかんせん今夜は少々酔ってもおり、言い訳やら何やらするのが若干面倒くさい。ため息をひとつ落として指をすいと動かした。
    「いてっ」
     深い紫の毛並みが踊る风息の背中に、近くに放り出されていた持ち主のスマホがめり込んだ。无限の雑な反撃だ。
     一応、買ったばかりの精密機械を壊さないよう着地先をクッションの上にしてやるだけの心遣いはある。
     背中を擦りながら恨めしそうな視線を寄越す风息に唇を引き結んで首を振り、无限は立ち上がった。
    「おや、もうお仕舞いか」
     傍らに立つ老君は、无限の瞳を覗きこむようにして微笑んだ。藍色の耳飾りがしゃらりと揺れる。
    「好きにさせているから、お前も楽しんでいるのかと」
    「違います」
     真顔で答えた无限は、手洗いへと向かった。楽しい時間は本当にあっという間で、そろそろ子供たちを帰さないといけない頃合いだった。


     水道の栓を閉めて顔を上げると、目の前の鏡に风息が映り込んでいた。いつの間にやら背後を取られていたらしい。
     洗面台を使うのかと思い、場所を譲ろうと一歩引く。すると同じだけ距離を詰めた风息が无限の手首を緩く掴んできた。
     どうした、と振り向いた顔を反対の手で包みこまれたと思ったら、ものも言わずに口付けが降ってくる。目尻、頬、そして鼻先を啄んで唇にたどり着いた风息の吐息からは酒精が香っていた。
     酔ってるな、と思いながら无限はおとなしくそれに応える。
     居間でやられていたら即座に張り倒すところだが、ここは短い廊下と扉を隔てた別空間だ。
     力を抜いた身体は、とん、と洗面所の壁に押し付けられた。

     上唇を食んだあと、下唇へわずかに歯を立てるのは风息の癖だ。
     すり、とねだるように唇が触れ合わせられ、薄く口を開いて応えると隙間から熱い舌が入り込んできた。手首を掴んでいた手は、无限の後頭部を撫でて耳の縁をなぞりながらうなじへと添えられる。无限も、风息の背中へゆっくりと腕を回して形のいい頭を指先で愛でた。

     粘膜同士がぬるりと触れ合う。风息の唇も舌も熱かった。自分の舌も常より熱を持っている気がして背筋にじんと痺れが走る。
    「ん……」
     舌先で探り合い、やがて奥まで絡め合って深くなる口付けに、ここがどこかを忘れて理性を手放しそうになる。
    「ふ、……し」
     これ以上は。
     努力して目の前の肩を掴む。互いの唇が離れ、熱い息を吐いた无限は乱れた呼吸を整えた。不満気に眇められた紫の瞳を見上げて苦笑する。
    「戻らないといけないだろう」
    「それはそうだが」
     同じくひとつ息を吐いた风息が、ぺろりと唇を舐めたのはおそらく無意識だろう。
     やや薄暗い場所で、二人分の唾液に濡れたそれが光るのを見た无限は、不意に沸き上がった衝動のまま前言を翻して目の前の頭を引き寄せた。


    「む、」
     无限、と呼び掛けようとした言葉は、ぶつかる勢いで合わせられた唇の中へ消える。次いで頭に響いた音に、风息は目を瞠り動きを止めた。
     无限の両手のひらが、风息の両耳を柔らかく塞いでいた。深く交わらせた舌に、口内を思うさま掻き混ぜられる。くちゅりくちゅりと濡れた音が断続的に響き、頭蓋骨の内側を満たしていく。
     明らかに狼狽えた様子の风息に目許を緩め、无限は数拍の後に唇を離した。
     呆然としている风息の頭をよしよしと撫でてやる。
    「続きはあとで。わかった?」
    「お前な……帰ったら、覚えておけよ」
     片手を无限の肩にかけたまま、口許を手で覆った风息は悔しげに唸った。
    「わかった」
     期待しておく、と笑んだ无限に、风息はふんと鼻を鳴らして手洗いへと姿を消した。
     その耳の先が酒のせいだけでなく赤く染まっているのを横目に、无限はくすりと笑って居間へ戻ったのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    Lno_221b_ss

    DOODLE続きはあとで/风无

    元宵節の例のイラストで気が狂って書いた风无でした。当時はまだ藍渓鎮で老君と无限が邂逅したところまで読めておらず、2人の関係を師弟だと勘違いしていたので、少しだけ手直ししました。
    帰宅後のお話を書きたくて書きかけて、もう数か月寝かせているのでいつかそのうち……。
    ***


     くん、とごく小さな力で頭を左斜め後ろへ引かれた。
     ちょうど湯呑みに唇をつけようとしていたところだったので、狙いの外れた飲み口から茶がこぼれそうになる。いや、なみなみと注がれていた中身は慌てて起こした湯呑みの動きについてこられず、少しばかりこぼれた。
     宙でふわりと球状にまとまった茶をさりげなく吸い込み、湯呑みを持ち直しながら无限は視線をちらと左肩の方へ流した。予想どおり、結んで後ろに垂らした自身の長い髪の、その先端を摘まむ指が目に入り、見ているうちにも二度、三度と房を引っ張られる。
     悪戯な指の持ち主を无限は無言で軽く睨んだ。风息、やめなさい。
     少し前までビールを水のように飲んでいたから、多少酔いが回っているのだろう。上体をゆるりと起こした风息は頬をほんのりと上気させていた。
     彼の右隣、つまり无限の左隣では、これまた機嫌良く酒を呷っていた玄离が、今は頭を垂れてうとうとしている。その背中越し、床に投げ出すように伸ばした右手で无限の毛先を弄びながら、唇の動きだけで「やだね」と応えるのが小憎らしいことこの上ない。

     頭を軽く左右に振るが、その程度では风息の手から逃れるこ 2504

    Lno_221b_ss

    DOODLEダッツを買いに走る/风无

    「相手のために、深夜のコンビニへハーゲンダッツを買いに走る方が攻」みたいな受攻判定?をツイッターで見掛けて、判定はともかく风息にも走ってもらおうと思ったやつ。
    ※同居時空风无
    ***


    「アイスが食べたい」
     そう无限が言い出したのは、まだ汗も引かない寝台の上でのことだった。夜更けの色をした髪を乱したまま、顔にかかるそれをいささか乱暴に搔き上げて息をついた无限は、その色めいた動作とは裏腹に実に子供っぽい顔で风息に甘味の買い出しを強請りだした。
    「ええ……今からか?」
     まだ服も着ていないぞと難色を示す风息は、しかし常日頃は无限から甘えられることが少ないため、つい元来の世話好きな性質を発揮してしまうのであった。
    「ハー○ンダッツのバニラがいい」
    「じゃあ俺はチョコだな……じゃなくて。買いに行くのは構わないが、お前、それまで起きていられるのか」
    「問題ない」
     キリと顔を上げた无限だったが、いつもなら情事の後は早々に寝入ってしまうものだから、风息は胡乱な表情になる。今はこんなことを言っているけれども、帰宅したら寝顔での出迎えになる可能性が高いだろう。
    「……まあいいさ、分かった。すぐに戻るから待ってろ」
    「うん」
     素直な応えも、こっくりと頷く様子も常にない幼さを纏っており、风息は无限の頭をくしゃりとかき混ぜて部屋を出た。
     終夜営業の店までは徒歩十数分、この 1077

    recommended works