ああ、終わった。ふと浮かんだその言葉が、鋭い激痛よりもずっと先に、深く深く胸を突き刺した。
遅れて来る痛みのなんと陳腐なことだろう。それでも痛いものは痛いし、ああやってしまったとも思うのだから、やはり自分にはこれしかないのだと思い知らされる。
ざわめきの中にチームメイトの声が混じるようになったのは、恐らく抱き起こされたからなんだろう。体を持ち上げられ担架に乗せられた瞬間、その揺れにがくんと膝が揺れ、熱した熱鍋で転がされる蛙のような声が鼓膜を揺らした。そのひどい声に思わず耳を塞ごうとして、その一瞬後に気付く。
──ああ、俺の声か、と。
* * *
──前十字人体損傷。告げられたそれは、陸上競技……それも短距離選手の廣澤には少し意外な診断だった。
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