夢の続き 潮風が、前髪を揺らしている。
波の溶ける音、舟の駆動音、海のさざめき。心地よい揺れが全身を包んでいる。重い瞼を押し開ければ、長い長い夢を見ていたような気がしてくる。
ああ、中身は何だったか。ただ暗闇をさ迷って、一筋の光が差して——そのほかは。照りつける太陽に瞳を突き刺されて霧のように消えてしまった。
まばゆいばかりの陽光に体の型を取られてしまうような感覚に苛まれながらも、揺れる船体の上、上体を起こして周りを見渡す。青いばかりの空が広く、広く視界を覆っている。辺りはやけに静かで、鳥の声ひとつ聞こえない。板の上で長い時間を眠り込んでいたからか、節々を回してみれば少し痛むが体に異常はない。
ただ広い海の真ん中に揺る船頭へ立たされていること。この船の舵を取る誰かがいること。今分かる全てはそれだけだった。
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