ある夜の話「ねぇルシファー…起きてる?」
「…なんだ」
日付が変わって間もない夜。
先程までお互いの熱を交換していたふたりの星の民は、残る情事の香りもそのままに同じベッドに横たわっている。
静かに余韻に浸っていたルシファーに、ジータは恐る恐る呼びかけた。
ジータには、ルシファーに抱かれるたびにずっと気になっていたことがあった。
激しく抱かれ泥のように眠り、翌朝怠さの残る身体を引きずりシャワーを浴びることも少なくない。そしてほとんどの場合、目が覚めてもルシファーは隣にいないのだ。
抱き潰されピロートークなんてあったものではないし、色事の雰囲気を纏わない状況下ではどうしても聞くことができないでいた。
もし寝ていたのであればそれでいい、この話はまたいつか。答えを知るのが怖くないわけじゃない。いっそのこと気にしないほうがいいかもしれない。
そんな期待を裏切るかのようにルシファーは返事をした。
いつもなら真っ先に寝落ちているジータからの小さな呼びかけ。ルシファーは少し驚きつつも耳を傾けた。
ジータは意を決してルシファーに問いかける。
「ルシファーってさ、その……早く子供…とか欲しいって思ってたりするの?」
「………?」
掛け布団に顔を半分隠し、もごもごと言い淀んでるジータ。
ルシファーはほんのわずか眉間に皺を寄せ、視線を向け質問の意図を探る。
その視線で先を促されているように感じ、ジータはぽつりと話し始めた。
「なんていうか、理由もなくルシファーがこういうことするイメージあんまりなくって…」
「子孫については今すぐに必要であるとは考えていない」
「え、あ、そうなんだ…。じゃあなんで…?」
「………」
意味のないことをしたがらないルシファーだから。
単なる性欲処理とは思いたくないというのもあり、自分を抱くのはきっと何か望んでいることがあるのではないかとジータは考えていた。
ならば自分を抱く理由は子供なのだろうか、と。
一応恋人同士ではあるのだが、甘い言葉を交わすわけでもない情事はジータを不安にさせた。
愛という不確かなものを、ルシファーがどう考えているかジータはわからないでいる。
“理由もなく”
好いた女を抱く。それ以上に意味を持つ理由がいるのか。
気を失うまで抱かれても、それを単なる子作りの手段や作業のように捉えられていると感じ、ルシファーは些か不満だった。
大きなため息をつき、ジータに向き合う。
「お前の身体に俺の知らない部分があるなど許されん」
「な、なにそれ…」
「では聞くが、お前は何故俺に抱かれている」
「それは…その……」
好き、だから…?
掠れた声でそう呟くジータにはルシファーは同じ理由であると返す代わりに唇を重ねた。疑問形であることには今回に限り目を瞑ってやろうと思いながら。
頬を染めつつポカンとした表情のジータに再びため息をつきつつ起き上がったルシファーは、ジータに覆い被さるように体勢を変え、彼女の秘所に触れる。
「ひゃあっ!ちょっと…!」
「…余計なことを考え無用な心配をするとは、今日は随分と余裕そうだな。抱き潰したと思っていたがまだ足りなかったのか」
「えっ!?違っ…あっ」
中はまだ柔らかくて、ルシファーの指を飲み込んでいく。
己が吐き出した残滓に触れ、塗り込むようになかへと擦り上げた。
「やっ……んっ…ル、ルシファー!今日は午前中ベルゼバブさんが来るって──」
「ベッドの上で俺以外の男の名を出すな」
その後はこれでもかというくらい激しく、でもいつもより少しだけ優しく愛され、翌朝いつまでも研究室に現れないことを心配したルシフェルが起こしに来るまで、ジータはベッドから動けなかった。