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    貴族ローさん×庭師少年ゾロくんのネタ⑦

    剣と魔法のファンタジーっていいよね⑦貴族ローさん×庭師少年ゾロくんネタ⑦
    そろそろ終わりに向かいたいけど、なかなか終わらない。


     ゾロくんが恐慌状態から少し落ち着いたところで、ローさんはもう一度「すまない」といった。なにに対しての謝罪かわからず、けれどもうゾロくんはローさんの手から逃げようとはしなかった。諦めが滲むその仕草にローさんは苦しげに眉を顰める。
     そして、ローさんはそっとゾロくんの足に触れた。
    「この間は部屋から出て行かれたのに気が付けなかった。妖精の手引きだったのだろう。屋敷から抜け出す時も妖精に助けてもらっていたな? 屋敷の護衛騎士たちが子供が出ていくのにも気がつけないなんて、と落ち込んでいた。本当に、おまえは妖精に愛されている」
     その言葉とともに、ローさんの手が妖精避けのアンクレットをゾロくんの足首にはめた。
    「でも、——今日はこの部屋から出ることは許さない」
     妖精とのつながりが強制的に断ち切られたのを感じたゾロくんガチビビり。今まで妖精の気配を感じられなくなったことが無いから、不安過ぎて体が震え始める。
     そんなゾロくんの足に恭しいような手つきで触れて、足の甲に口付けるローさん。
    「すまない。そう怯えないでくれ。少しでいいんだ。逃げないで」
     囁かれる声は以前のような温かくて優しい音をしていて、でも、この部屋に閉じ込められて、妖精からも遠ざけられて……状況と、相手の様子と、自分の心と、何もかもが噛み合わなくて、もう、どうしていいかわからないゾロくん。
    「魔具には慣れているだろう?」
     でも、その言葉を聞いた瞬間、全身がさあ、と水を浴びせられたように冷たくなった。ローさんの目がじっと自分の首に向いている。ずっと、ローさんが自分の首に視線を向ける瞬間があることには気が付いていた。気遣わしげなそれを、ゾロくんは気が付かないふりをしていた。
     ——慣れる? この、魔具に? 尊厳を奪い、貶めるこの道具に? これは首輪だ。人ではなく、家畜である証だ。それに、慣れる?
     胸を冷たい氷で貫かれたような心地がした。これまでで一番、苦しくなった。
    「おまえがあの場所に立ってると知って、血の気が引いた。おまえに触れた者たちがいると思うと、はらわたが煮えそうになった。もっと早く気がついていれば……。おまえを連れ帰ったのは理由がある。もうあんな、自分の身を売るようなことをしないで欲しい。それから、……ああ、説明するには時間が足りないな。まだ仕事が残ってるんだ少しここで大人しくしていてくれ。話は、後でしよう」
     ローさんはアンクレットをつけたゾロくんの足首をそっと撫でて、部屋から出ていってしまった。扉に鍵がかけられる音がした。
     呆然として、身動きすら取れずにベッドの上でただ時間が過ぎていく。夜が明けていく。
     締め切られたカーテン越しに日の光を感じて、けれどこの部屋に光の妖精は入ってこられないようだった。
    「っ、……ッ、は、…っ、ッ、〜〜っ、!」
     吐く息が空気をわずかに揺らす。ただそれだけ。泣き喚いても、罵詈雑言を口にしても、嘆いても、何にもならない。いつもそうだ。声がないということは、空気になってしまうに等しい。無意味なのだ、何もかもが。それでいて、みんなみんな、都合のいい時だけ、ゾロという存在を思い出す。後継のスペアとして、労働力として、定のいいストレスの捌け口として、見下してもいい存在として、セックスのためのおもちゃとして。
     がり、と爪が喉を引っ掻く。魔具はどんなことをしても外れることがない。契約に縛られたそれは、契約を破棄しない限り効力を発揮し続ける。効果は単純であればあるほどに強くなる。ただ、声帯を封じるだけのそれは、呆れるほどに強い魔法だった。
    「……、ふ、…っ、ッ、…」
     ぱたりとベッドに倒れ込む頃、喉元は熱を持って血と引っ掻き傷で真っ赤になっていた。魔具に傷は一つもない。
     わかっている。あの人が、自分を傷つけようとはしていないことを。これまでの男たちのように貶めようとしていないということは、わかっている。ただ、自分が勝手に期待して、勝手に裏切られたような気分になっているだけだ。あの人だけは、——自分を人間としてみてくれていると、そう思いたかった。
     身じろぐとちゃり、と甲高い音を立てるアンクレットのことを「なにか意味があるのだろう。バカな自分には、わからないけれど」と投げやりに考える。
     尊い方の考えることなんて、わかるはずがない。
     ——ああ、ここはみんな優しくて人並みの生活ができたから勘違いをしたんだ。おれに人としての価値なんてあるはずないのに。つかれた。なんだか無性に消えてしまいたい。
     そう思いながら目を閉じた。
     
     ▼
     
    「ロロノアのこと、ローさんの手を煩わせる結果になって申し訳ないです」
    「気が付かなくてすみませんでした」
    「いや、ゾロ屋と妖精の関係を少し考えればわかることだったのに指示も何もしなかったおれが悪い。謝るな」
    「はい。とりあえず少し休んだらどうです、昨日から動きっぱなしですよ」
    「時間がない。朝には叔父がここに到着する」
    「えっ?! ドンキホーテ公爵が?! なんで?!」
    「表向きは先日の対魔物防衛線での戦勝祝いだ。が、どこからかゾロ屋の事を嗅ぎつけやがった」
     部屋の中にゾロくんを閉じ込めた後、ローさんはペンギンとシャチを引き連れて足早に廊下を抜けて執務室へと向かう。
     ゾロくんに逃げ回られてる間に、色々なことがややこしく絡み合い始めた。
     ローさんの叔父はドフラミンゴ。中央で四大公爵と言われている一門の現当主で、ローさんの後継人だったのがドフィ。あくどい事やってるんだけど、商才あり過ぎてバレないし、中枢に食い込み過ぎてるのと立ち回りうますぎて王様みたいになってる。まあ、言うてドレスローザん時よりは穏便だと思うけど。
     ち、と舌打ちをしながら執務室の壁の一角で魔法を使うと、隠し部屋が現われた。そこに入っていくローさんにペンシャチも続く。
    「ご丁寧に、最大の功労者に直に褒美を、と言ってきた」
    「あー…そらバレてますね、光魔法の事」
    「おれはゾロ屋を手放すつもりはない。なりふり構っていられない。全力で囲う。ドフラミンゴに連れていかれてみろ、どんな扱いを受けることか……ぞっとする」
     それに、とローさんは言葉を続ける。
    「たぶん、ゾロ屋の精神状態というか、境遇はドフラミンゴとある意味で相性が良すぎる。あの男、心に傷がある人間に付け込む手腕に関しては右に出る者がいない。アリジゴクか蜘蛛の巣もかくや……。とにかく、ゾロ屋の身柄が正式にウチにあると証明しなくては」
     秘密裏に集めてたゾロくんやゾロくんの実家の資料を前に、ちょっぱやで「トラファルガー家当主が身柄を預かる、後継人になる」って書類を作っていくローさんとペンシャチ。ほんとは王都で承認をもらわなきゃなんないんだけど、辺境伯はある意味治外法権というか、ある程度領内裁量権を持ってるから、後で報告したら大丈夫よ、的な権力を行使することに。
     
     午前、早い時間にバチクソ豪華な魔道馬車が到着。なんか魔法で超快適な馬車ってことで。なんか無駄にこの世界の仕組みを色々考えてるけど説明するとアホみたいに文字数嵩むから「そういうもん」だと思っといてください。
     すっげーめんどくさいと言うか迷惑ですって顔に出てるローさんが一応出迎えに出てる。上級使用人一同もずらり。
     馬車から降りてくるのは、サングラスをつけた大きな男。サングラスも何かの魔具らしい。
    「よう、ロー。元気そうで何よりだ」
    「ようこそ、叔父上。そちらも元気そうで…ハァ…なによりです」
     病気になって死なねーかな、と言う顔とため息を隠しもせずに言い放つローさんにドフィはにやにやしてる。ドフィとしては、ローさんのこの態度や跳ねっ返り感が、子猫を構ってるようで楽しいそうです。
     サロンに移動して一応紅茶を出しつつ、「忙しいんで早く帰って欲しい。帰れ」を破れた八橋にくるんで伝えるローさん。聞き流すドフィ。
    「まあ、そう邪険にするな。おまえがおれを嫌っていることはわかってるが、遥々ここまで来た身内にもう少しいたわりの情ってもんを」
    「御託はいい。叔父と甥ごっこも十分だろう」
    「フッフ…、ガキめ。せっかちなのは変わらないな。慌てるとろくなことが無いといつも教えているだろう? まあ、いい。本題に入ってやろう。先だっての国境防衛戦に際してのねぎらいの品を王城から預かって来ている。目録は後で確認するといい。それから、……こちらの方がおまえとしてはメインかな?教会が強い光魔法が観測されたと情報を上げてきた。保護と公表を、と言い出したが、……おれが止めている状態だ」
     ドフィの言葉にローさんは苛立ちを抑えようともせず「教会の強欲どもが」と呟いた。
    「ロー、それで?戦で最も活躍した功労者、光魔法の使い手はどこにいる?」
     指を組んで楽しげに言うドフィをローさんは鼻先で笑う。
    「おまえの前に出す必要性を感じない。誰に渡すつもりもない。おれが正式に保護をする。手続きも終わっている」
     ローさんの言葉に、おや、とドフィが片眉を上げる。
    「随分と手際が良い。そこまで執心するとは珍しいな。使い手は女か?」
    「……すぐそういうことを言うから、おれはお前が嫌いなんだ」
    「男か。もう寝たんだな? おまえがそこまで骨抜きにされるとはとんだファムファタルもいたものだ」
    「ドフラミンゴ!」
     部屋の中にローさんの魔力が渦巻き始める。ドフィはそんなのそよ風としか思ってないので、足を組み替えてソファの背に凭れて笑う。
    「ゾロ屋を侮辱するな!」
    「ふ、フフ、フッフッフ、なるほど、なるほど。……ロー、かわいいおれの甥。おれはおまえが幸せになればいいと思っている。その幸せがおれの利益になるならばなおのこと。さあ、ビジネスの話をしよう。事と次第によっては、おまえの手助けをしてやろう」
    「何をたくらんでいやがる」
    「なに、おれも教会は大嫌いなんだ。燃やし尽くしてしまえたら随分とスッキリするのに」
     そう思わないか?と問うてくるドフィは笑ってるけど目はマジなので、ローさんはぞっとする。この男は表面上をうまい事取り繕ってるだけで、中にはぐちゃぐちゃの混沌と怒りと狂気が詰まってる。何かのはずみでそれが弾けたら、教会という一大組織を焼きつくす戦争くらい、簡単に引き起こすだろう。
     ローさんはドフィが嫌いだけど、こう言う時のこの男の苛烈さと計略のうまさは信用している。なので、クソデカため息をつきながら、ペンシャチに頷いて見せて、朝方までかかって用意したゾロくんを引き込むための書類をドフィに見せることにする。
     書類を見てドフィは笑いを引っ込めて、少し険しい顔をした。
    「……、おまえのファムファタル……男だからオムファタルか。オムファタルは騎士の名門ロロノア一族の忌み子だな。あの家は身内の恥を一等嫌う。完全に引きはがすのは難しいぞ」
    「外に放り出しておいて?」
    「そう言うものだ。首輪がついてる状態で自分たちの目に触れないところへ置いておくのがベストだと思っている。……というか、情報の隠蔽の仕方が巧妙すぎるな。おれも先代に婚外子がいたなんて知らなかった。おまえ、よく突き止めたな?」
    「突き止めるも何も。年若い田舎者の辺境伯は舐められていてね。ゾロ屋がうちに奴隷同然の扱いでよこされた時から情報が開示されていた。『うちに不利益を被るようなことは許さない』と言う釘のつもりなのだろうな」
    「先代は謀略の面でも優秀だったが、当代はあまり期待できんな」
    「違いない」
    「よし、良いだろう。法務部のトップはおれに仮がある。この書類は本日付で処理させよう」
    「対価は」
    「おいおい、水臭いことを言うなよ。対価なんていらないさ」
    「嘘をつくな。おまえのことだ、放置したら後々で最悪のタイミングで最悪の要求をしてくるに決まってる。今ここで取り決めを、し、て……」
     はた、とローさんが動きを止める。
    「? どうした、ロー」
     ドフィが声をかけてくるけど、ローさんは動きを止めたまま何かを考えているようだった。そして、は、と息を吐いて、静かに頭を抱える。
    「対価……そうか……」
     呟いたローさんにドフィが首を傾げる。ローさんの後ろに控えているペンギンとシャチはようやく理解したか、と目を伏せたままため息をついた。
    「対価は、…必要だ……」
     呟くローさんはその場にドフィがいることも一瞬忘れていた。ただ、ゾロくんがどうしてあんなにも対価を支払おうとしていたのかがわかってしまった。
     ——高位貴族からの過分な施しを、貴族の家で生まれたゾロ屋が素直に受け取れるはずがない。体での支払いは、きっと、彼がそれしか持っていないから。体を売っていたのは、おれが拒絶したから、対価としての金銭を稼ぐため。ゾロ屋の地獄の一端は、おれ自身じゃないか。
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