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    雇の朝

    朝起きてまずすること。ため息、額と瞼を撫でる、夜間カメラのセキュリティチェック。ベッドから降りる前に周りが寝る前と変わっていないか確認する。起き上がってキッチンに向かい、ケトルで湯を沸かす。その間に洗面所で顔を洗い、鏡を見てため息。歯を磨き終わる頃、湯が沸騰する。キッチンに戻りコーヒーをいれ、ブラインドの隙間から外を見ながら啜る。外は日常が始まっていて、往来を人や車が行き来する。ため息、冷蔵庫の前まで移動して扉を開ける。中は水だけ、フリーザーには冷凍食品が数個残っていて、取り出して温める。明日以降の予定を画面に映し確認して、もう一度暗号化する。温めた朝食をプラスチックフォークで食べながら、食材の買出しを思い気が重くなる。ふと義手が目に入り、次のメンテナンスと次世代モデルへの換装をどうするか頭をよぎる。どうせ外出するのだからついでに、と一日の予定に闇医者を追加する。
    終わった朝食のゴミを捨て、ため息……の代わりに煙草に手を伸ばす。煙を吐きながら寝室に戻り、着替える。いつもの黒い姿になり外に出て、背後のロックシステムが自動で鍵をかける音を聞く。半分残った煙草は、通りの隅にある排水溝に投げ入れる。

    いつものグローサリーに向かい、いつものメニューをカゴに突っこむ。世の中は電子決済が一般的だが、スラムに近いここはまだ現金支払いが優勢だ。指紋のない手で寝ぼけた店員に紙幣を渡し、次の目的地に向かおうとすると店内に妙な格好をしたやつがいた。
    薄汚れた水色の服、首元は白い毛皮が覆い、鳥の羽根までついている。どう見ても店売りの服ではない。ブーツも革製で、膝には何かの……骨。顔にはフェイスペイント、目は分厚いゴーグルがしてあって、見えない。
    そいつは、手に持った缶詰を懐に詰めようとしている。万引きはここらでは日常茶飯事だが、明らかに手慣れてない。
    ここの店は客に不干渉なので普段使いに都合がいい。面倒事を起こされると警察やらギャングやらが集まってきて面倒だ。使う店を新しく探さなければならなくなる。
    加えて、細身の汚れた姿にかつての自分を重ねてしまった。孤児だった自分がここまで生き残ってるのは、運が良かったからだ。善意を振りまくつもりはないが、今回はこいつの幸運になってやってもいいだろう。
    おい、と声をかけると大袈裟にびくついた。払ってやるからここで面倒は起こすな、というと、大人しく商品を差し出してきた。一緒にレジに向かい、金を出してやる。
    会計後店の外にそいつを引っ張りだし、この店では盗みはするな、別のところでやれ、と釘を刺す。そいつは支払いの礼を言うと、故郷に帰ることができなくなって困っている、手がかりを見つけるまで身を寄せたい、と厚かましい頼みを出してきた。今日何度目かのため息をつき、金を出したのは善意ではない、面倒を起こされると迷惑だからだ、と突き放す。着いてくるな、と言い残しその場を立ち去り、闇医者の元へ向かうがそいつはずっと着いてくる。何度撒こうとしてもなぜか上手くいかない。最終的になんとか撒ききって闇医者の診療室に向かうと、なんとそこにはそいつがいた。
    追跡と気配を消す能力に感心しつつも先ほどの顛末を医者に話し、医者に引き取ってもらおうと伝える。が、医者はそいつを五体満足のまま引き取るつもりはないらしい。引き取る代わりに、そいつの常人以上の眼を取り出して売るという。本人は、主神?から授かった眼を失うことはできないと反発する。あの追跡能力を無くしてしまうのは惜しい、と渋々そいつを連れて帰ることにした。

    から始まる雇ヤンブを…………
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