ルネッサンス数多の困難、剣林弾雨の日々を乗り越えてきたつもりだったが、眼前の光景を見て茫然と立ちすくむしかなかった。
何故だ、どうして……?
こんなものがここに?!
黒い紐と、三角形の布地で形成されている、大人の女性用下着に酷似した外見のそれは、下着よりもはるかに布面積が小さい服、いや、水着だ。
いわゆるビキニである。
何故だ?
孤児院では海水浴や湖水浴などというレジャーに興じる余裕などなかったが、この時代の、しかも未だ足すら異性に見せることを憚る封建的な帝国で、水着と言えば男女問わず、いうなればレスリングのユニフォームのような──あんなぴちぴちではない──ズボン型のワンピースか、女性ならば長袖かつ足首までカバーする薄い生地で作ったワンピース(こちらは洋服そのものに見えそうなもの)だったはずだ。
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