※「」の台詞は作中の共用語
※『』の台詞は少女の国の言語
遊園地のベンチに座っていた少女は、場所に似合わぬ退屈そうな顔で周囲に行き交う人を眺めていた。
付近で立ち止まった青年、ルークに目を向ける。
時折辺りを見渡し、キャラメル味ポップコーンを食べて破顔する様を見て、優しそうで、素敵な人だと思った。
瞬間、少女はベンチを降りて駆け出し、古いコートの裾を掴んだ。
「ん? ……君、どうしたの?」
ルークはその場にしゃがんで彼女と視線の高さを合わせた。
想像通り優しい人だ、と分かってほっとした少女が声を出す。
『パパが戻ってこないの』
その言葉は青年には聞き馴染みのない言語。
だが、言葉は理解出来なくても状況から推察することは出来る。
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