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    あおい

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    あおい

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    フィガロの得意な魔法にドン引きする賢者ちゃん(♂)

    ##まほやく

    俺が引いていることだけは感じ取っているらしいフィガロが、先程言った通り小さな花火を魔法でつくっている。
    それをぼんやり目に映しながら、今度は俺自身の心が背筋を寒くする。
    おそらく、俺に得意な魔法は何?と聞かれたから実際にやってみせた、それだけだ。
    彼にとってはそれだけのことでしかない。
    耐え難い苦痛と、それを一瞬で忘れさせる高揚。甘い声。
    正しく麻薬だ、と思った。あんな魔法を本気で、例えば恒常的に使われたら人の心はどうなってしまうんだろう。
    誰かに使ったことがあるのか、とか、なんでそんな恐ろしい魔法を何も言わずに試すんだ、とか、言いたいことは色々あったが怖くて言えなかった。
    ただぼんやりと、彼が魔法で生み出した暖かい光を見ている。
    そんな俺を見てやっぱり見た目に分かりやすい方がいいのかな、などと言いながら彼は嬉しそうに笑う、いつもの笑顔だった。
    フィガロ先生、と自分を指すときの優しい顔だ。
    「フィガロは」
    「うん?」
    知らず言葉がこぼれる、何を言おうとしたわけでもない。
    何も続けられず、かと言ってなんでもないとも言えず、俺はそのまま黙った。
    自分の手元を見つめて押し黙る俺にフィガロは何も言わなかった。
    見入っていると思っているのかもしれない。
    何も噛み合わないまま、ゆっくり時間が流れる。不思議と居心地は悪くないが、彼と、彼に要らない言葉をぶつけてしまいそうな自分が怖くて、うっすらと寒い。変な感じだ。
    「フィガロは」
    「うん」
    「自分の魔法が、怖くはないですか?下手したら、相手の心が壊れてしまいます」
    フィガロはその言葉にちょっとだけ目を丸くし、それから優しく微笑んで、少しだけ首を傾げた。
    「大丈夫、俺はお医者さんだから。治すのは得意なんだ。壊したい相手以外壊したことはないよ」
    「そうですか……」
    その声は子供を諭すように優しく、何故かちょっと嬉しそうだった。
    どうしてだろう、昔近所の子供をほめた時のことを思い出した。胸を張るその子の得意げな声色を。
    ……よく分からない。
    このよく分からないに、いつか答えは出るのだろうか。
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