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    mmmuutoo

    @mmmuutoo

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    mmmuutoo

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    🐯くんハピバ!
    しかし内容は全く誕生日関係ない虎伊?虎伊地?
    らぶらぶを当たり前に受容してる同級生だといいなと。平和な世界。

    マジックパワーー!マジックパワーー!

    この世の中には呪力という、ある一定の人間にしか扱えない力が存在している。つまりは、自分の認識外には不可思議で証明しようのない力の流れが幾多も存在していてもおかしくないということである。
    「だからさ、呪力があるんなら催眠力的なのもありそうじゃね⁈」
    「まあ、言いたいことは分かるわ」
    「ないだろ」
    「夢ねぇなあ!」
    任務までの待機時間、お菓子が軽くつまめる待機室にて騒ぐのは呪術高専二年生の三人である。なんでも、昨夜のテレビで見た催眠術特集に感化された虎杖が冒頭のようなことを言いだしたことが発端のようであった。虎杖はビシリと伏黒を指差した。
    「伏黒! そこに立て!」
    「めぐちゃんになんでも言うこと聞かせてやんなさい!」
    釘崎の悪ノリは今日も切れ味がいい。めんどくせぇなぁと言いつつも立ち上がってやる伏黒も、案外ノリがいいのだ。虎杖は伏黒の前に立ち、指を一本突きつける。雰囲気たっぷりにセリフを宣った。
    「この指が下へ下へと降りていきます……そう、そこで目を瞑ります。そうするとあなたの頭の中に水がたっぷり張られたコップが見えますね。そのコップには更に水を足していきましょう。溢れた水はあなたの意識です。どんどん水が零れて自分の意識が曖昧になってきます。そうです。身体がふわりと軽くなってきましたね。カウントダウンが終われば、あなたはもう私の意のままです。三、二、一……目を開けて!」
    ぱちり、と目を開けた伏黒は黙ったまま虚ろに宙を見ている。これはよもや、と色めき立った虎杖は指示を出す。
    「三回回って玉犬と一緒にワン! だ! やりなさい!」
    「やるかボケ」
    「効いてないじゃない‼ つまんねー」
    がっくし、と肩を下げているところにコンコン、と控えめなノックの音が二回。扉の向こうに返事をすると、アンダーリムの眼鏡がよく似合う男が顔を出した。黒色のスーツに痩せた頬。ワーカホリック気味な優秀な補助監督である。実は虎杖とお付き合いをして三か月の男。それを知っているのは同学年の三人と担任の特級術師だけだ。伊地知としては学生とあれそれな関係になるつもりは毛頭なかったのだが、虎杖が泣き落としたというか、脅したというか、言質をとったというか、とにかく紆余曲折あってどうにか今の形に納まったのである。虎杖は伊地知の持っている盆の上に乗ったプリンが一つとシュークリーム二つを見て目を輝かせた。
    「生菓子を頂きました。いかがですか?」
    「やったー! ありがとうございます!」
    「伊地知さんのは?」
    「私は大丈夫です。皆さんでどうぞ」
    そこまで言って、先に食べたと言えばよかったと後悔する伊地知である。恋人の顔を覗かせた虎杖が、半分こね、とシュークリームを割ってごく自然に伊地知に寄越したのだ。学生と補助監督の関係性ならば素直に一つ食べていただろう。そう思うとこういう行為は非常にむず痒くなってしまう伊地知である。しかし、自分のために半分にされたそれを受け取らないほど、彼は無情ではない。それに、純粋に虎杖の優しさが嬉しかった。
    釘崎が非難しつつも洋菓子を見比べている。
    「あんた私より先に選びやがって」
    「あ、わり。プリンよりも半分にしやすそうと思って取っちった」
    「私はシュークリームね」
    「俺には聞かねーのかよ」
    そうは言いつつもプリンと小さなスプーンを手に取る伏黒であった。
    甘い食べ物は腹だけでなく心まで満たしてくれる。たっぷりのクリームが零れないように小さな口で食べる伊地知が愛おしく、虎杖は満足気に眺めていた。食べている間のしばしの時間、伊地知がなにか話題を、と話を振る。
    「先ほどはなにか盛り上がってらっしゃいましたね」
    「ああ、虎杖が呪力的な感じで催眠力があるんじゃないかってバカなこと言い出したんですよ」
    「わー! はずいから止めて‼」
    「バカなのは最初っからバレてるわよ」
    「まあ、認知できてないだけで事実存在しているものというのはあるかもしれませんね」
    「ほぉら見ろ!」
    「手の平返すな。ドヤ顔うざい」
    過酷な任務へ行く前の雰囲気とは思えぬ楽し気な声に、伊地知の頬も緩む。同級生がいるというのは心強さもさることながら、こんなにも楽しいものなのだなと眩しささえ感じてしまう。
    「そんなドヤんなら伊地知さんにやってみなさいよ」
    「え」
    「そうだな。さっきのバカ丸出しのセリフを聞いてもらえ」
    「いや、マジでテレビで言ってたんだってば」
    半分にしたシュークリーム、ようやく最後の一口を食べ終えた伊地知と、早々に一口で食べ終えた虎杖。後から食べだした二人の手にはそれぞれがまだ半分ほど残っており、余興がてらやってみろという心がありありと見て取れた。急務に追われているわけでもなし、学生のノリというものに馴染んでみようと伊地知も「いいですよ」と諾とした。
    先ほどと同じく、虎杖は伊地知を立たせてその前に立ち、指を一本突きつける。雰囲気たっぷりにあのセリフ。
    「この指が下へ下へと降りていきます……そう、そこで目を瞑ります。そうするとあなたの頭の中に水がたっぷり張られたコップが見えますね。そのコップには更に水を足していきましょう。溢れた水はあなたの意識です。どんどん水が零れて自分の意識が曖昧になってきます。そうです。身体がふわりと軽くなってきましたね。カウントダウンが終われば、あなたはもう私の意のままです。三、二、一……目を開けて!」
    レンズの奥の瞼をぱちり、と目を開けた伊地知は虚ろに宙を見ている。本当に催眠術にかかったような雰囲気が出ていてドキリとしてしまう。案外とノリがいい伊地知に関心しつつ、ちょっと困らせてやりたくて虎杖は意地悪な指令を出した。
    「伊地知さん! 俺にキスしてください!」
    「はい」
    伊地知は少しぼう、っとした様子で頷いた。いつも通りの掠れ気味の声だが、抑揚がない。同じくらいの背丈の虎杖の胸に手を添えて、少し首を傾けてから顔を寄せた。躊躇なく近付く顔と顔。唇と唇。息がかかる。
    「」
    「ちょ、待って……!」
    「んっ」
    並外れた反射神経を持つ虎杖の手によってその唇は大きな手の平に。伊地知は、あれ? とでも言いそうな顔で虎杖を見ている。可愛い。が、今ではない。釘崎は勢いよく立ち上がり、ちょっと伊地知さん⁈ と額に手を当てる。
    「熱はなさそうだけどなんか、大丈夫? 付き合ってるの知ってるって言ってもキスシーンは見たくないんだけど」
    「おいおい釘崎‼ でかい声で言うなって‼ 秘密にするからってオッケーもらったんだから‼」
    「お前の声のがでけーよ」
    この三人がコントよろしく騒いでいることなど日常茶飯事である。廊下に声が漏れ出ていても、今日も元気だなぁくらいしか思われていないだろう。慌てる釘崎と呆れる伏黒など気にもせず、伊地知は穏やかに虎杖に問いかけた。
    「キス、しないんですか?」
    「……! し、たい、けど……ッ!」
    若い下心をぐぐぐと抑えて、虎杖は伊地知の肩を押して身体を引きはがした。だって付き合って三か月経つが、キスなんてまだしていないのだ。当然したい。先ほど手の平に伊地知の唇が当たったが、それだけでもうとんでもない気持ちになってしまっている。しかし目の前にいる伊地知は、呪力ではないなにか存在を認知できないものの力によって認識を変換させられているだけにすぎない。そのはずだ。やはり催眠力はあるのだ。虎杖は昨日見たテレビ番組を思い出して、伊地知に言った。
    「伊地知さん。目を瞑って。そう。……数を数えたら貴方は頭の中がすっきりして、自分の意識を取り戻します。いいですね。スリー、ツー、ワン……はい。目を開けて」
    伊地知はぱちりと目を開く。きょとりと虎杖を見て、横にいる釘崎を見て、プリンを食べ終えた伏黒を見て、それからまた虎杖に視線を戻したかと思えば、ボン! と音が鳴りそうなほどに赤面した。
    「い、い、いたどり、くん……っ、なに、を……!」
    「ごめん伊地知さん、ほんとにかかっちゃうとか思わんくて……!」
    ただただ謝罪する虎杖だが、でも、と付け加えた。
    「キスしたいのはほんとだから」
    第一印象では目つきが悪いと評される真っすぐな瞳は、あまりにも真剣そのものであった。だからこそ、初めてのキスが催眠状態など! と催眠解除に到ったわけだ。伊地知の顔をしっかりと見て、自分の気持ちを伝え、また今度臨ませてほしいと虎杖は照れることもなく告げる。あまりにも眩しいフレッシュな真剣さに、眼精疲労気味の伊地知の目はしょぼついた。お二人がいるのにそんなことを言うのは止めてほしい、と恥ずかしいやら気まずいやらで伊地知の顔色がころころ変わる。
    ソファに戻った釘崎は、慌てて伊地知に駆け寄ったのなんてとっくに忘れてしまっている。伏黒の隣で脚を組んで携帯をいじっているが、この二人(主に虎杖)が醸し出すラブい雰囲気にはもう慣れっこで完全スルーのスキルを身につけていた。あ、と思ったその時、伏黒の携帯から軽快なアラームが鳴った。これが鳴ったら昇降口に行くよう時間をセットしていたのだ。
    「ほーれほれ。行くわよー」
    「あ、もうそんな時間ですね……!」
    「伊地知さん、ごちそうさまでした」
    「そうね。ごちそうさまね。二重の意味でね」
    「もー! 釘崎!」
    「伊地知さん、行ってきます!」
    青春真っ盛りの可愛い可愛い学生たち。もちろんそのうちの一人である虎杖は、熱っぽくも甘い視線を伊地知に送り、小さく指先に触れてから部屋を後にしたのであった。虎杖の熱に当てられたように耳まで真っ赤になってしまった伊地知は、顔を手の平で仰ぎながら困惑したため息をついたのであった。
    「……催眠力、なんてあるわけないじゃないですか……」
    虎杖は任務を終わらせて無事に帰ってきたら、すぐに伊地知の元に来るだろう。さっきの反応から、ヘタな演技はきっとバレている。他の二人にもバレてしまっているのだろう。
    学生である虎杖はまだまだ子どもだ。子どもにはキスもなにもしない。親子的コミュニケーションのハグだけ。そう決めていたはずなのに、キスをしてほしいと言った虎杖の目があまりにも切実で、可愛くて、健気で、状況にかこつけて手を出そうとしてしまった。多感な時期の学生だからこそ不用意なことはしたくない。可能性に溢れるその身を守りたいと恋人的な接触をしない約束をしたはずが、その約束を破ろうとしたのは伊地知だったのである。
    「私のばか……」
    小さく呟いた言葉に大きな反省を込めて、溜め息は胃の奥へと飲み込んだのであった。


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