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    さつき

    @mogmog_gkn

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    さつき

    DONE硝子お姉さんと津美紀ちゃんと手荒れのお話。硝子さんは伏黒姉弟と交流があるという幻覚。最終的には悟硝とつみめぐのお話にしたいと思ってます。
    玉手 ひどく複雑で、数奇で、皮肉な縁あって、年齢が2桁にも満たない幼い姉弟と五条と私と、誰1人として血縁のない4人で家族の真似事のような時間を時折過ごしている。

     その姉弟のうちの姉の方、津美紀とともに、炊事の後片付けを終えて、冬の足音が聞こえ始めた頃に五条が持ち込んだ円形の炬燵に2人並んで足を滑り込ませて腰を落ち着ける。
     少女が宿題の準備をする傍ら、手近にあった鞄の中から細長いチューブ型のハンドクリームを取り出す。キャップをくるくると回し外して、手の甲にチューブを軽く当てて中身を押し出し、再度キャップをくるくると回し嵌めて天板に置く。左右の手の甲を擦り合わせると、ふわりと、甘すぎない程度に花の香りが広がる。ルーティンと化した淀みない一連の動作で、掌と指先にもハンドクリームを伸ばして、水仕事後の手を保護しながら労った。そして、ハンドクリームを鞄に戻そうと手を伸ばそうとしたところで、ふと、左手側から視線を感じて、その視線の主に目を向ける。少女は宿題のドリルとペンケースを広げる手を止めて、興味ありげにハンドクリームと、それに触れようとする私の指先を、やや前のめりになって小さな唇を少し開けたまま見つめていた。その視線の意味を思案し、もしかしたら、少女が置かれている境遇を考慮するとハンドクリームを塗るという行為が未知なのかもしれない、と瞬時に思い至った。
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