猫になる夢を見た。「にゃあ」
目が覚めると、猫になっていた。
つまり、夢を見ているのだ。本当は目など覚めていないのだろう。
その証拠に、この部屋は自分の部屋で、見慣れたベッドには『アルベルト・ハインリヒ』が眠っていた。
くあ、
猫になった俺は、寝起きだというのに眠いのだろう。
背を反らして伸びをしながら欠伸をする。
「にゃあ」
人の指先ではないけれど、機械ではない、温もりのある身体が懐かしい。
このまま猫でもいいかもしれない。
夢だというのに、そんなことを思う。
「…」
ベッドの上の『アルベルト・ハインリヒ』が身動ぎをして、動き始める。
俺がここにいるのならば、あれは誰なのか。
しかし、目が覚めてからほんの少し金属の指先を眺める癖、自分の身体が通常通り動くかを、関節を動かして確認する癖は、間違いなく『俺』である。
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