セベクとおばあの夏休み〜おはぎ編~「おばあ!! 来たぞ!!」
玄関の引き戸のガラガラという音をかき消しながら玄関から響く元気な声は、一年ぶりに聞く孫のものだ。
「まあまあセベクちゃんいらっしゃい。大きくなったわねぇ、一人でこんなに遠くまで大変だったでしょ」
「この国には移動用の鏡が繋がっているから問題ない。電車とバスの乗り換えも滞りなく来れたぞ!」
去年より顔の位置が随分高くなったけれど、得意げに笑う顔は去年までと何ら変わらない。
茨の谷と繋がる鏡はここからは随分遠く、ましてやここは電車も通っていない辺鄙な田舎。辛うじてバスはあるものの、それをいくつか乗り継がなければたどり着けない。ほんの少し前まで小さかった孫がそんな長旅を成し遂げた成長に感動するし、そうまでして会いに来てくれた事が嬉しくてたまらなかった。
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