夢見これは夢だなと事代作吾は気づいた。
人間寝てる間には夢を見る。ノンレム睡眠とレム睡眠の繰り返しだ。寝付きがどうこう、枕を変えると眠れないなんて話を耳にすることがある。大学の講義に加え部に顔を出したりバイトで忙しい日々を送ると当然おやすみ3秒である。そんな目をつぶって開けたら朝だったなんてざらな彼には無縁の話であったが、近頃どうも事情が変わってきた。
どんなに疲れていても必ず見る夢がある。
正確にはとある場所に立っていて、これは夢だと気づくのだ。
その場所というのが今ここにいる夜中の学校の校庭だ。奇妙に湾曲した校舎、グラウンドに残された使い込まれたボールや白線の途切れた砂地を見渡して彼はため息をついた。
この夢を見始めた頃はこれが明晰夢かと少し面白くなったものの、繰り返しの状況にだんだんと飽きてくる。
そうすると人の気配を感じた。視線を上げるとあいつがいる。見覚えのない場所に見覚えのない人物。初めこそ戸惑ったものの今となっては慣れてしまった。
「こんばんは先生」
「おう」
学生服を着た男がにっこり笑って校舎を指さした。
「いきましょうか」