我儘な恋人「降谷くんはいるか?」
警備企画課。普段彼がデスクワークをしている部屋を訪ねると、現れた彼の部下は、立派な眉をさげ、困った顔でオフィスの奥を見た。彼は声を潜め、席にいる降谷をうかがう。
「いるにはいるんですが……」
「ご機嫌ななめかな?」
「いえ、ご機嫌というより」
風見の言葉の先を待つまでもなく、赤井は彼の言いたいことを察した。
赤井の目当ての人物は、いつものように奥の席で姿勢よく座り書類をさばいていたが、よく見ればいつもの精彩がない。彼をよく知らない者が見れば、すばやく書類を捌いているように見えるが、常日頃から彼をよく知る自分(と風見)から見れば、その違いは一目瞭然だった。
「朝からあの様子なんですが、何度言っても休んでいただけず……」
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