春の夜 まだ寒い春の日、仕事を終えて帰り支度をしている途中、見計ったようにスマホに届いたのは轟からのメッセージ。ばくごう、助けてくれって、またかこのハイエナめ。
プロヒーローになって3ヶ月が過ぎた頃、偶然現場で出会した轟は何ともボロっちかった。捨てられた大型犬という言葉がピッタリといったところか?
プロになって以来一度も美容院に行っていないんじゃないかと思われし伸びた髪、決して濃くはないが至近距離でチェックすれば解る無精髭、伸びた爪先の荒れはビタミン不足、
そのあまりにボロっちさに呆れた俺から幾つもの暴言を浴びた後、ツラだけはイイ男は縋るような目をして言ったのだ、ばくごう、助けてくれと。
『お前みたいに器用に色々やれねえ、仕事だけはしっかりやっているが後は全部おざなりになっちまう、今もスゲェ眠ぃ、腹減った、眠ぃ』
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