僕の隣にいるのは君がいい-人生でたった一度、焦がれる恋が出来るならそれでいいと思ってる
そして、その恋の枷が外れないんだー
学生の頃、ずっと大好きだった人がいた。
-天馬司。変わり者同士で変人ワンツーフィニッシュなんてあだ名までついた
それぞれの夢のために僕たちは解散の道を選んだ。
彼は、世界的なスターになるために。僕は、演出家になるために。
あの頃は、彼の本気を引き出せる演出家は僕だけだと自負していたー。
でも、今はもう違う。僕じゃなくても彼の良さを彼の魅力をあっさりと引き出してしまう人たちがたくさんいるー。
だから、僕の代わりなんていくらでもいる。
それは、仕方ないことだ。
君が活躍していく中で僕はー何も変われないままだ。
ずっと、君としていたショーが心地よすぎて
君以外とのショーを楽しいと感じないんだ
君の好きな物、好きな映画、好きな演出ー
僕なら君をもっとーそんなことまで考えてる君のことならなんでもわかる自信がある。
だけど、一つだけ。
君のー好きな人は誰ですか?
(まぁ、きっと僕じゃないんだろうな)
そりゃそうだろう。飛ばしたり、吊り下げたりする人間のことを誰が好き好むのか…
自分だったら、絶対にごめんだと思ってしまう
(ほんとに、よく付き合ってくれたものだよ。)
お人好しーというか、まぁ彼は人当たりがよく誰に対しても同じような感じである
だからきっと知らないだろうな
僕が影でなにを想って傍にいたかーなんて。
-オレにはずっと忘れられない相手がいる
たった一人、だが。
神代類。学生時代、変人ワンツーフィニッシュなんて呼ばれたアイツはワンダーランズ×ショウタイムの演出家として一緒にやっていた
オレのことを飛ばしたり、吊り下げたりするような男だ。
最初こそ、遠慮がちに演出を出してきていたがやりたい演出はオレが全て叶えてやる!と言ったことにより遠慮もへったくれもないようなことばかりさせられた
-でも、オレは自分の演出を思いついてワクワクした顔をしながらオレに話す
あの顔が好きだった。嘘だ。今でも好きなのだ
あんな幸せそうな顔で、声で-『次はどんな演出にしようか』なんて言われて落ちないわけが無い
-きっと、類もどこかで活躍してることだろう
オレはスターになるという夢を叶えたというのに何か足りない気がしている
その“なにか”は、未だにわからない
アイツの好きな物ならわかる自信があるーでも
(類はオレに会いたいと思っているのだろうか?)
なんとなく。疎遠になってしまって、オレにはどうすることも出来なかったー
-この先の未来なんてなにも見えないな
この先の人生に期待することなんてなにもない。
だってそうだろう?彼が-司くんが僕の隣にいる未来なんて見えないんだ
-それなら。いっそ消してしまえばいい。
ふと、頭をよぎったのは母校-神山高校だった
あそこにー行ってみよう。
そう思いながら家を出たー
許可を得て入る母校は変わり映えのない風景だった
(懐かしいな。)
過去に在籍していたクラスを横目に、ある場所に向かう
ガチャッ
さぁあと風が吹く
(やっぱりここは落ち着くな)
まだ、一人でショーをしていた頃、ここで一人でいたっけな。
あの頃は一人でやれる。一人でやる方が気楽でいいと思っていた。
しかし、そんな僕の思いをあっさりと塗り替えていって、僕に誰かとショーをする楽しさを-否、君とするショーの楽しさだけを植え付けて君はあっさりと離れてくー
(別に僕のものってわけじゃないけど…)
『断言しよう!オレとやるショーは楽しいぞ!』
転入したての頃に言われたセリフ…
(うん…。君とするショーは僕の人生で一番楽しいものだったよ…)
だから、今君のそばにいるのが僕じゃなくてもー
「………嫌だな。」
(あーあ。こんな感情に今さら気付くなんて僕って諦めが悪いだけじゃなくこんなに独占欲、強かったのか)
「…………もう、全て諦めて捨ててしまえたらな…。」
彼への想いすらなかったことにできたならどれだけ楽だったろうか…
「なんだ?お前らしくないな!」
突然、後ろから聞こえた声にビクッと肩を揺らす
「…………どうして、ここにいるんだい?」
「なんとなく、ここに来ればお前に会える気がしたからだ!」
(あー、もう。そうやって…)
「あれから…オレは色んなところを飛び回りながら自分の夢を目指してるわけだが」
「…うん。君の活躍は知ってるよ」
「お前は、もう演出は手がけないのか?」
「…僕はもういいかな。」
「そうか。ならー神代類!オレ専属の演出家になってくれ!」
「…………………人の話、聞いてたかい?僕はもう…」
「オレならばお前の演出に12000%で応えてやれる!」
「…久しぶりに聞いたね。それ」
「オレはな。類。オレの未来にお前がいないのは嫌なんだ」
「…………どういう意味だい?」
「オレはずっとお前を忘れられなかったんだ。」
サラっととんでもないことを言ってないかい?君…
「オレの隣にいるのはお前がいいんだ」
「…………君はバカなのかい?」
「んなっ!?人がせっかくー」
「…せっかく離れようって思えたのに。」
「…オレはそんなこと頼んでないが?」
「知ってる…」
ほんと君はいつも僕の心にスっと入り込んできて
「後で後悔して離して欲しいって言われても離してあげないからね」
「ならば、そんな心配などいらないから無用だな!」
「僕、だって。ずっと君が好きなんだ。だからー僕の隣にいるのも君がいい。司くん」
そう言って抱きしめるとそっと抱きしめ返される
(僕では無理だと自分勝手に諦めていたけどー)
「ねぇ、司くん。まだ間に合うかい?」
「…これが答えだと言わないとわからないのか?」
「ふふ。そうだね。…大好きだよ。司くん」
そう言って口付けを送る