Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    itokiri

    文字書きです。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💙 🎃 👏 🙌
    POIPOI 159

    itokiri

    ☆quiet follow

    アズ監
    その人の中に一時でいいから刻まれたかった女の子の話

    ##アズ監

    願いの在処2 おかしい。こんなのおかしい。そう彼の顔が語っていた。
     戸惑っているのに、理性より本能が主導権を握っているのだろうか。という具合なのだろうけれど、実際はそうではない。
     きっとこれはあの薬のせいなのだ。
     望みを叶えるために、なにかを代償にして得たもの。
     彼はなにも悪くはない。浅ましい女の欲にハメられたにすぎないのだ。
     人工的な暖色の灯りが、滑らかな白い肌を柔らかく温かみを持たせる。
     触れればひんやりとしていて、ニンゲンではないのだとわかるのに。
     抗えないものに拒絶をし続けても苦しいだけだ。迷いを打ち払うなにかがいるのだろう。
    「先輩、私、アズール先輩にならなにをされたって構わないんです」
     お手本のようなセリフだ。こんな言葉を人生で言うことがあるだなんて思いもしなかった。
    「そういう言葉はあまり使わない方がいいですよ」
    「でも本当に……」
    「もう黙って、なにも言わないでください」
     これから僕は間違いを犯すのだと、そういう表情だった。
     優しく額に唇が触れた。そこから頬や首筋と少しずつ下へ、そして甘く痺れるように。
    「あなた初めてですか?」
    「それって今重要なんですか?」
    「当たり前でしょう。……丁寧にしないと、傷つけてしまうでしょう……」
     口籠る姿は割と年相応なんだなと、呑気に考えていたけれど、逆に彼はどうなのだろうかと気になってしまった。
     けれどそれを聞くのはなんだか違うような気もするし、知りたくないような気もした。
    「初めてだというつもりで接してください」
     だから私は曖昧にした。
     彼はしばらく黙った後「わかりました」と呟いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    kazeaki_twst

    MAIKINGアズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」
    前作の「星が降る夜に」の続き。
    その日は、本当にいつもと変わらなかった。
    四年生になり、いつもと同じように研修先からグリムと帰宅し
    「グリムーっ!ちゃんと外から帰ったんだから、手を洗いなよーっ!」
    なんて言いながら、自分の部屋で制服を脱いでいた。外は、すっかり暗くなり秋らしく鈴虫か何かの虫が鳴いている。
     そして、ふと鏡に目をやると首元のネックレスが光った。そこには、恋人が学生時代に使用していた魔法石───を再錬成して作った少し小ぶりの魔法石がついていた。監督生の頬が思わず緩む。
     これをプレゼントされたのは、ほんの数日前のことだ。

    「監督生さん、これをどうぞ」
    いきなり差し出された小さな箱を見て、監督生は首を傾げた。目の前は、明らかにプレゼントとわかるラッピングに、少し緊張した表情のアズールがいた。
     監督生は、何か記念日であっただろうかと記憶を辿り───思い当たる事もなく、思い出せない事に内心焦った。当然、自分は何も準備していない。
     しかし、このまま何も言わずプレゼントに手をつけなければ、きっとアズールは傷つく。いつも余裕綽々とした態度で、若年だと侮られながらも学生起業家として大人たちと渡り合う深海の商人── 2244