飲み干したそれはあなたが笑っている日常の味がするカクテルに詳しくはない。むしろ、外で食事をする、お酒を飲むという行為は控えていた。気が付いたら、バーのようなところにいたのには少し驚いてしまったが、ああ、こういう夢もあるのだと周りに客もバーテンダーもいない様子を見て納得した。夢なのか現実なのかはいっそどうでも良く、無人であるということに対して少しの安堵感を覚えてしまう。
ただ、カウンターテーブルに置かれたコースターの名を見て、また先ほどとは違う感情が芽生える。
「留依」様から 「夏色」様へ。
るい先生の名前がある。安心感、妙な居心地の良さは、僕の嗅覚にこびりついた消毒液の匂いをどこからともなく感じとった。ここは、あの落ち着く保健室ではないのに。
どうやらここはバーさながらカクテルを飲める場所らしく、僕のためにカクテルが用意されているというのは手に取るようにわかった。
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