承花この旅が終わったら君と学校へ通えるんだな。と言っていたことを覚えている。
足りないものも変わったものも無く、死と隣り合わせの非日常な旅に出る前と嫌味な程に全く同じなこの平凡な日常に不満があるわけでは決してない。
足りないものったってもともと無いはずのものを例えるにはおかしいし変わったものったってまた然り。だが確実にあいつがここに居ないことへの虚無感と喪失感と哀しみと色々な負の感情が俺の胸のあたりにぐるぐるととぐろを巻いて、俺の人並み以上に図太いと自負している神経を着実に摩耗していき、かといって対処法がわからないものだから手の施しようが無く平凡な日常を未だに覚醒しきらないような覚束無い頭で送っていた。
胸のわだかまりの主な原因である戦友で親友の思い出は校内のどこにも在りはせず。思い出を介して彼の声を聴こうにも人の記憶は案外非情に脆いもので。
記憶の中の彼は果たして本物か俺の捏造なのだろうか。