向こうの君 シノギの資金回収を終えた黒雲会若衆のホンルはその日は大層にごきげんであった。
最近、不可思議な出会いにめぐり逢った。こんなことは同僚に話しても
ついに頭がイカれたかと鼻で笑われるだけだろうし、特に話す気になるほどでもなかった。
ダンテ様
ある日部屋の鏡にその人物は映し出された。初めての出会いにあったにも関わらず
見た瞬間から、誰かを理解しそして今までその人物をしっていたかのように会話まで交わした。親指の傘下である黒雲会は親指に習って同じく規則、序列を重んじている。
それなのに鏡の向こうの彼はそんな事も知らぬように接してくれる
かわいい人だな・・・
そう思った。彼のために働きたい。彼が僕のオヤジだったらなんだってやりたくなるのに・・・
それから時々、知らない”なにか”と知らない同僚と戦ってる記憶が夢のように流れてきては消えていった。
「ずるいなぁ、そっちの僕・・・」
ダンテ様に褒められたい。”こっち”にも彼はいるだろうか?
探してみようか?でも・・僕のみてるのは”そちら”のダンテ様・・・・
ねえ、ダンテ様こちらに来てくださいよ
・
・
その日、ダンテはバス内でPDAで囚人たちの人格、E.G.O.の確認作業をしていた。
管理人として、ひいては自分のためにも、囚人たちがなるべく死なないように
こちら優位にたてるようにはどうすべきかと引き出した人格を吟味していた。
そしていつも通りに黒雲会人格のホンルの能力値を確認しようとタップした時だった。
【黒雲ホンルはあの待ち遠しい時間がやってくるのを鏡の前で待機していた。
いつもはただ眺める鏡にある思考をもって。
「さぁ早く来て」 待ちに待った瞬間は来た
鏡にダンテの姿が写った瞬間彼は鏡に手を伸ばした】
「やっと会えましたね!ダンテ様」
<えぇえ!!?え・・・!;;>
持っていたPDAから表示されていた人格が突然飛び出してきて自分に抱きついてきた。
<え、人格を借りるってこんなこともできたの?>
想像もしない出来事に思考が一瞬で馬鹿になってしまった。
そうしてるうちに黒雲ホンルは抱きついたまま私を引きずり込もうとした
「ダンテ様、”そちら”ではなく”僕”の世界に来てください」
<まっ・・?!抜けない・・!>
がっちり掴まれてるため、もがこうとしても抜け出せない
<たす・・・!>
助けを求めようとした瞬間、横から何かが飛んできて私をつかむ黒雲のホンルを貫いた。
それは偃月刀だった。鏡にピシピシとヒビが入っていくように
黒雲ホンルの姿もぱらぱらとくずれていく
「あぁ”僕”がいたんですか、残念ですね・・・」
の言葉を最後に周りにガラスの破片が散らばった。
「だめに決まってるじゃないですか、ダンテさんは ぼ・く・の ですよ」
拘束がとけ気が抜けたダンテはそのまま後ろにいるホンルにもたれ掛かることになった
<び、びっくりした・・・今のは何・・?>
PDAの画面を見ると真っ黒になりERRORの文字が浮き上がっていた。
意識が地につかないままでいるとホンルが突然ダンテの体を自分の方に向けて
ダンテを抱きしめた。まるで先程抱きしめられたあとを自分に上書きするように。
そしてすっと離れると「大丈夫ですか?ダンテさん?」と微笑んだ
<あ、ああ、でもPDAがこんなんだからイサンとファウストに見てもらわないと
いけないね>
「そうですね~、また何かあって支障をきたしたら困りますしね」
<ところで、ホンルさっきなんかとんでもないこといってなかった?>
「・・・そうですか?」
うーんいつもの笑顔なのに怖いな・・・。
結局そのあとイサンとファウストにみてもらったが原因はわからずじまい
もしくは技術に関わることなので教えてもらえなかっただけだかも。
とにかくあの一件以来は何も起きることはなかったあれは一種の不具合だったのだろうか
ただ変わったことがあるとすれば、しばらく私は黒雲人格の使用をためらったことと
私が人格を選択する際には必ずホンルがそばにいたことだろうか・・・・
おわり