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    ittinomiwaazii

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    ittinomiwaazii

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    爺と孫の第六次聖杯戦争【注意】
    下記の注意書きを読んで、地雷がある方はそのまま閉じてください。

    ・Fate本編から約50年後の話。
    (ベースはUBW。アーチャーが座に還らずに士郎くんと契約してそのまま付き合っているIFルート。)
    ・弓士の間に息子が生まれています。
     更に、そのまた息子(孫)がメインの話です。
    ・アーチャーは出てきますが、士郎くんは既に亡くなっているので出ません。
    ・弓士の孫以外に遠坂家と間桐家の孫も出てきます。
    ・聖杯は解体されていない世界で、第6次聖杯戦争が開始されます。
    ・聖杯戦争のルールを変更している点があります。
    ・書いてる人間は出来るだけ調べながら書きましたが、設定が全て頭に入っている訳ではありません。
    本来の設定と間違っている可能性があります。


    ・凄く大まかなあらすじは、
    「凛ちゃん達が聖杯を解体する事が出来ず、約50年。起きてしまった第六次聖杯戦争を外見が士郎くんそっくりの孫とアーチャーで参加し、仲間と何とかして聖杯を今度こそ解体するぞ!という話」

    以上です。
    各自、自己責任でお願い致します。
    クレーム等お受けしませんのでご了承くださいませ。


    以下本編です。







    俺にとって【爺さん】は憧れのヒーロー。
    そういう存在だった。
    自分の外見が生き写しかと思われるくらいにそっくりらしく、親父達からよく爺さんの格好良い昔話を聞いていたのだ。
    それが大好きで、最終的にはよく「話して」と俺から強請った。

    爺さんは俺が生まれる前から少し遠い所に住んでいて、帰って来るのが大体は年末年始のみ。
    なので直接会えるのは数えられるくらい。
    その数少ない機会を今か今かとどれだけ楽しみにしていた事か。

    「丞(すすむ)、元気か?」

    と、来る度に言って頭を撫でてくれる手が好きだった。
    それぐらい、俺は祖父ちゃん子だったのだ。

    そんな爺さんは俺が12の時に亡くなっている。
    現在の日本人男性の平均寿命から考えるととても短い人生だ。
    最期は仲の良かった人達に見送られて。
    その人達を見て、爺さんはやっぱり凄い人だったんだと強く思った。
    今はもう、玄関に置いている写真の中で知らない白髪の男性の隣で笑っている爺さんにしか会えなくなってしまった。
    そんな、とても凄い自慢の爺さん。

    だが皆、爺さんの話をした後は揃っていつも最後にこう言う。



    「正義の味方に憧れても、決して士郎(父さん)のようにはなってはいけない」



    『爺と孫の第六次聖杯戦争(仮)』



    「おはよう親父」
    「起きたか。おはよう丞」

    居間に向かうと親父が作っている朝食の良い匂いがした。
    今日は焼き鮭か。

    「今のうちに顔洗って洗濯と風呂掃除してくる」
    「おう、頼む」

    ウチは家事が全て分担されている。
    平日だと朝食、弁当作りと洗濯の取り込みは親父。
    風呂掃除と洗濯物干し、夕飯作りは俺。
    休日はその反対。
    母さんは3年前に病死して、父親との2人暮らしだ。

    家事と顔を洗ってから、作ってくれた朝食を2人で向き合って食べる。
    親父のご飯は悔しいが、美味い。

    「そういや、藤村先生が怒ってたぞ。『虎と呼んだから今度叩き直す!』って」
    「いや、あの虎の婆さんが卑怯なぐらいに強過ぎて、ボコボコにされたからついボソッと…」
    「教えていただいてるのだから、ちゃんとした名前で呼んであげなさい」
    「む…はい…」

    「しかしあの人は幾つになっても元気だなぁ」とボヤきながら食べる親父。
    自分だって時たまに頭の中で呼んでいるくせに。

    「ああ、そうだ。凛さんから頂いたペンダントは肌身離さず持ってるか?」
    「いきなりなんだよ親父。あの赤い宝石のやつだろ?ずっと持ってるよ。よく分からないがウチと遠坂の家が普通とは【違う】のはまあ、分かってるし」

    爺さんは魔術使いだ。
    俺と親父は魔術は護身程度に習ったが使わないので、魔術師の家系は途切れていると言っても良いぐらいだ。
    そもそも目の前の父は普通の人達の間から生まれた訳では無いらしい。
    その1人は爺さん。
    爺さんは普通の人間だ。
    相手が人だけど普通じゃないとかなんとか…。
    魔術に関する理由なんだろうが、詳しくは教えてもらえてないので分からない。
    そしてその普通ではない人間に、俺は会った記憶がない。
    そんな普通からしたら奇天烈な我が家を他に言っても信じてもらえる訳もなく。
    隠せと言っても言える相手がほぼいない。
    遠坂も隠しながら生活をしている。
    【何か】が全てが分かるわけではないが、遠坂は本当の魔術師だ。
    魔術は一般人の目に触れてはいけないものだと父さんに聞いたので聞かない。
    あ…いや、アイツの場合は学校では猫被りまくりだから殆どだな。
    毎日毎日まあ飽きもせず、疲れずに演じられる。
    しかしそのフラストレーションを俺にぶつけるのはやめていただきたい。

    「なんで今更そんな事聞くんだ?」
    「いやまあ、最近ここら辺物騒だからな。念の為だよ。何かあったら使うんだぞ。その為に頂いたものなんだから」
    「分かってる」
    「俺達は少し変わってるから何があるか分からないからな。あと、何でも首を突っ込もうとするな。
    丞は一般人だ。まずは逃げろ、いいな?」
    「今更それぐらい分かってるよ。俺はせいぜい相手の目を誤魔化すぐらいしか出来ないし」

    また食事を続けようとする。
    しかし親父は真面目な顔をしたままだ。

    「今日の放課後、どこも寄り道せずにまっすぐ家に帰ってこい」
    「え?あ、うんわかった」

    「今日は仕事早く上がれるし、父さんが美味しい晩御飯作っとくからさ」
    そう言っていつものようなヘラッとした笑顔で親父は仕事へと向かった。

    いつもと同じ朝。
    それなのに、嫌な胸騒ぎは何だろう。
    よく分からないまま、一先ず俺も学校へと向かう。





    「衛宮くん」
    「お、遠坂どうした?」

    時は流れて放課後。
    隣のクラスである遠坂に廊下で呼び止められた。
    学校ではマドンナのような扱いをされている遠坂美鈴(みすず)。
    しかしそれは猫被りで、本性はあかいあくま(3代目)だ。
    まったく、二重生活みたいな事をして疲れないのだろうか。

    「今日はこのまま家に帰るの?」
    「ああ、そのつもりだけど…何でだ?あ、晩御飯食べに来るか?」
    「いいえ、ご飯はまたお婆様と一緒にお邪魔するわ」
    「そうか。ならまたいつでも声掛けてくれ」「ねぇ衛宮くん…今日はなるべく早く家に帰りなさい」
    「ああ、分かっ…は?」
    「良いから」

    遠坂はいつにもない真剣な顔だ。
    なるほど、こいつは本当に関わってはいけない事だ。
    流石に俺でも察する事が出来る。

    「ああ…うん、わかったよ。親父も今日は早く帰るって言ってたし」
    「そう、なら安心ね」
    「またいつでも家に来いよ。親父も喜ぶ」
    「ええ、色々と片付いたらそうするわ」

    遠坂が居なくなってからクラスの男共に「なんだいつもと様子が違うがとうとう破局か⁉︎」などよく分からん事を聞かれたが全て無視して校門へと向かう。

    学校から出ようとした時だった。

    「衛宮先輩!」

    そう焦り気味の声で走りながら呼んだのは間桐蓮実(はすみ)
    女の子のような名前だが、男だ。
    と言っても大人しい性格で、中性的な顔付きなので今でも偶に女と間違われる。
    本人はかなり気にしているようだけど。

    遠坂家と間桐家はずっと繋がりがあるが、間桐家はもう継げる魔術師は居ないと聞いている。
    それでもどうやら遠坂と間桐のお婆さんの仲良が良く、それから今も孫世代に当たる俺達も仲良くやっているのだ。
    蓮実は1つ下の1年生。
    だが今は弓道部で第一線としてバリバリ活躍している。

    「帰る直前にすみません…」
    「いや別に構わないけど、どうした?」
    「その…いつも突然で申し訳ないんですが…今日の他校との練習の団体試合に出る予定だった先輩が急に熱で早退してしまって…」

    蓮実はとても申し訳なさそうに言う。
    なかなか本題には入らないが、粗方分かった。

    「分かった。その代理だな」
    「はい…お願いしても良いですか?」

    親父の「真っ直ぐ帰って来い」の言葉を守らなければと思うものの、現在部員数がギリギリだとずっと頭を悩ましている蓮実や他の弓道部員達をそのまま放っておく事が出来ない。

    「ああ、いいよ」
    「本当ですか?ありがとうございます!」

    パァと分かりやすく涙目になりながら嬉しそうにする蓮実。
    まあ、出来るだけ早く帰れば良いか。
    親父にメッセージアプリで「弓道部の手伝いをする事になったからちょっと遅くなるかも」と送りながら弓道部へと向かう。

    「今聞くのも何ですが、先輩は今月どれくらいの部活のピンチヒッターを任されたんですか?」
    「ん?今月に入ってからは剣道部とバスケ部の2つだな。だから今回で3つ目だ」
    「凄い…さすがです!穂村原の風来坊ですね!」
    「そのよく分からん通り名みたいなの辞めてくれ…」
    「でも先輩凄いです…運動神経抜群だからって殆どの部活で活躍出来るなんて」
    「いやまあ大体のスポーツは学校でルールとか習うし、そうでもないのは成り行きでなんとか…。
    剣道は今もやってるし、藤ねぇの勧めで弓道は少し齧ってたからな…。それが役立つならまあ良いかなと」

    実は体育会系の部活だけではなく偶に園芸部や料理研究部の助っ人要員、美術部のモデル、雑用、生徒会の書類整理の手伝い…など幅広く呼ばれる事がある。
    部活に入ると毎日帰りが遅くなって親父への負担がさらに増えるし、これぐらいが俺にとって丁度良い。
    それに、これで皆が助かるなら尚更だ。

    「先輩、今から弓道着持ってくるので中で待っててください!」
    「おう、頼む」

    更衣室で弓道着を待ちつつ制服を脱ぐ。

    弓道と剣道。
    藤ねぇ(本人曰く、「いくつになっても藤ねぇは藤ねぇなのよ」だそうだ)から剣道と弓道を小学生の時に勧められ、最初はどちらも習った。
    実は剣道より弓道の方が肌に馴染んだのだが好きになったのが剣道で、そのまま今も剣道だけは続けてきたのだ。

    「先輩、弓道着持ってきました!」
    「ありがとう、蓮実。着替えたら弓道場に向かうから先に行っててくれ」
    「わかりました。待ってますね」

    弓道着に身を着ける。
    赤いペンダントをカバンから取り出して片手で握りしめ、そして目を閉じた。
    聞こえるのは自分の呼吸音だけだ。
    深呼吸をして精神統一。
    すると、暗闇の中でいつも何本にも別れた線のようなものが見える。
    それを辿るよう想像する。
    弓道、剣道その他の部活動のサポートをする時にいつもこの行為を繰り返す。
    そうすると、不思議と他人に成り代わったかのように集中できるのだ。
    スポーツ選手がするルーティンのようなものかもしれない。

    「…よし、行くか」




    今回参加する弓道は団体戦。
    任された役割は最後の「落ち」だ。
    「本当にすみません…今回出れなくなった人が落ちでして…そのままの順番でお願いしても良いですか…?」
    という蓮実の願いで落ちを請け負った。
    正直、俺はどこの順番でもあまり変わらない。

    自分の役割である落ちの番がきた。
    弓を構える。
    的に目掛けて集中。
    弓を引いて命中する事をイメージ。
    「あ、よし当たるな」とこの時には何となくだが分かる。
    そのままいつも通り矢を放とうとした時だ。

    「は…」

    一瞬、靡く赤い何かが見えた気がする。
    弓道場にあんな真っ赤な何かがあっただろうか…。

    「おい集中しろ、たわけ」

    背後から低い男の声が聞こえた気がして、ハッとして即座に集中し直し、矢を放った。

    何とか中心に命中してホッとする。
    そのままいつも通りの所作をして戻る。

    「あれは…」

    ただの見間違いだったのかもしれない。
    だけど、何故これ程まで気になって仕方がないんだろう。





    「先輩、今日はありがとうございました!
    あと、遅くまで片付けも手伝ってもらっちゃってすみません…」
    「いや良いよ。それより大変だったな」
    「はい…最近、体調不良者が多くて…ここ最近は試合も中止が多いんです。今回の練習試合も無しにするか先生達も結構悩んでたみたいで…」
    「そうか…。蓮実も気を付けろよ」
    「はい!」

    弓道場の出口で部員のみんなが散り散りになって帰っていく。
    さあ俺達も帰るかと思って最終確認の為にカバンの中に手を突っ込んだその時。

    「あれ…」

    ヤバい。
    あの赤いペンダントが無い。
    いつも学校に行く時にはカバンの奥にしまっているし、集中する時に出したがちゃんと元に戻した筈だ。
    帰る時に何処かに落としてしまったか…?
    あれを無くすと色々とヤバい!

    「ごめん、蓮実!忘れ物した…!弓道場の鍵貸してくれないか?」
    「え⁉︎でしたら俺も一緒に探しますよ!」
    「いやいい!もう遅いから先に帰っててくれ。鍵は俺がちゃんと職員室に返しておくから!」
    「わ、わかりました…」

    そう言って、蓮実から鍵を受け取る。

    「悪い、ありがとう」
    「いえ…。あの先輩、今は色々と物騒ですし、見つけたら早めに帰ってくださいね」
    「おう、蓮実も気をつけて帰れよ」
    「はい、ではお先に失礼します」




    「えっと…あるとしたらここら辺だと思うんだけど…」

    更衣室を探す。
    自分が使っていたロッカーには入っておらず、他のロッカーにも入っていなかった。

    「誰か間違って持って帰ったとかないだろうな…」

    そんな事があってみろ。
    俺は色々な方面から怒られる…いや、殺される…!

    「ん…あ、あ!あった…!」

    ロッカーの反対側の端に転がっていた。
    傷や破損等も無さそうだ。
    使われた形跡も…特に無い。

    「よ…良かった…」

    ヘナヘナとその場で座り込む。
    とにかく、本当に良かった…やっと肩の力が抜けた…。
    しかし何故こんなところにあるんだ…。

    「もしかして…ネズミ…とか…」

    あとは実は虐められてるとか…。
    いやそれは有り得ないと思いたい。

    「あ、ヤバい流石に遅くなり過ぎた」

    スマホを取り出してみると、親父から何件ものメッセージが来ていた。
    上手いご飯を用意してずっと待ってくれているのだろう。
    本当に申し訳ない…。

    「ごめん、忘れ物して取りに戻ってたから遅くなった。今からすぐに帰るっと…」

    メッセージを送ってすぐに部室から出た。
    鍵を閉めて、職員室へと返そうと向かっていた時だった。

    ズドン!と大きな音が遠くから聞こえたのは。

    「爆発か…?」

    音と共にやって来た地震のような一瞬の揺れ。
    流石に真っ直ぐ帰らなければいけないのは分かっているが、もし何かあったのなら…。
    確認して、必要であれば警備員に対応してもらうか、消防へ連絡かをしなければならない。

    「親父…本当にごめん…!」

    回れ右をして音がした校舎へと走って向かう。
    流石に親父の胃がキリキリ痛んでいる頃かもしれない…。
    聞き分けのない息子で本当にごめんなさい。




    「音は確か、ここら辺だった筈だけど…」

    周りに警戒をしながら探してみる。
    すると、一つの教室が何か大きな怪物が暴れたのかのように机や椅子などが散乱していた。

    「なんだよ、これ…」

    中には破損している物もある。
    あきらかさま、これは人の仕業では無い。
    だとすると…。

    『何でも首を突っ込もうとするな。
    丞は一般人だ。まずは逃げろ、いいな?』

    今朝の親父の言葉を思い出す。
    分かっている。
    これは、俺が踏み込むべきものではない。

    「まずは、逃げる…」

    何があったか突き止めたい気持ちが大きいが、ずっと親父や凛さん達から言われてきた言葉を破ってしまう事は出来ない。
    一先ず、この惨状をスマホのカメラで保存して帰った後に親父に見せて相談しよう。

    しかし、物事はそうスムーズには進まない。

    「ああもう!なんで…!」

    遠くから、声が聞こえる。
    そしてこの声は、遠坂美鈴だ。

    「遠坂…!」

    その声を聞いて、俺は一目散に走った。
    親父ごめん…約束守らなくて本当にごめん…!
    だけど大切な幼馴染みを放ってはいられない…!

    「遠坂!」
    「え…てはぁ⁉︎衛宮くん⁉︎」

    駆け付けると本当に遠坂がいた。
    そして、変な服装の誰かに襲われそうになっている。

    「逃げるぞ!」
    「ちょ、ちょっと…!」

    遠坂の腕を掴んで逃げる。

    「これでもくらえ!」

    凛さんから貰った緊急用の宝石をある分全てを投げつけた。
    魔力を少し込めて投げるだけで相手を足止め出来るようになっている。

    どこに逃げる…⁉︎
    どこか…取り敢えず一目散に遠坂と逃げる。
    遠坂が何か大きな声で言っているが今は無視して兎に角!逃げる…!

    「と、取り敢えずここで…」

    がむしゃらに走って着いたのは弓道場。
    ここなら矢も弓もあるから最悪、少しぐらいの太刀打ちは出来る筈だ。
    乱れた呼吸を何とか整えようとすると、遠坂が「ねえ、ちょっと⁉︎」と暴れ出すのでまずは掴んでた腕を離した。

    「わ、悪い…腕強く掴みすぎたな…痛かったか?」
    「そ、それは別に大丈夫…じゃなくて!何でアンタがまだ学校にいるのよ!それにいきなり割り込んで邪魔するし!」
    「学校にいたのは弓道部の手伝いで…って邪魔ってなにさ!お前、襲われかけてたじゃないか!」
    「襲われかけてたんじゃないわ!何とかあの状況を打破しようとはしていたわ!」 
    「その言葉とあの状況からして万事休すだったんじゃないか!」
    「あのねぇ…!はぁ…ああもう、アンタだけは絶対に巻き込みたくなかったのよ…」
    「それは、すまん。あの教室を見て何となくそれは感じてたんだが…」

    やっぱりそうだったのか。
    だから、親父や遠坂が「真っ直ぐ帰れ」と言っていたんだ。
    あれだけ言ってたのに…申し訳ない気持ちになる。

    「まあ、起きてしまったからには仕方が無いわ。それに、本当はさっきは打つ手が殆ど無かったの…。だから助かったわ。ありがとう」
    「いや、別に…」

    急に素直になられるとこっちが困る。
    こういう時にどう反応すべきか分からない。

    「さて、ここからどうすべきかを考えないとね。アンタの顔も見られてるからこのまま1人で返すわけにもいかないわ。少しだけだけど、手伝ってもらうわよ。
    取り敢えず丞は後方支援。矢で相手を妨害して。相手は英霊だからそんな攻撃殆ど効かないだろうけど無いよりはマシよ」
    「おう、分かった」
    「私も…「そんな悠長な事で良いのかしら」

    ハッとして直ぐに行動出来る訳もなく。
    気付けば2人とも吹っ飛ばされいた。

    「さっきのはちょっと痛かったわ。オモチャみたいな攻撃かと思えば…だからもう、手加減しないわ。2人まとめて殺してあげる」
    「クソ…」

    頭を強く打ったからか、グラグラする…。
    遠坂は…気を失っているみたいだ。
    このままだとまずい…!
    すぐに助けないと殺される!

    「あ」

    直ぐ近くに落ちていたカバンからあのペンダントが出てきている。
    それを掴んで何とか遠坂のところまで全力で走る。
    よく分からん英霊とやらはゆっくりと遠坂に近付いていた。

    「先ずは貴方ね。死になさい」
    「辞めろ…!美鈴!」

    敵が珍しい武器を振り上げようとしていたその瞬間に美鈴の前に立ち塞がる。

    「あら、この娘を助ける気?何も持たない普通の人間が何をするの?このままじゃ貴方から死ぬわ」
    「そんなのやってみないと分からないだろ…お前みたいな奴に…遠坂を、美鈴を殺させない!」

    文句は多いし、数え切れないぐらい喧嘩もしたけど…それでも大切な幼馴染みの1人。
    こんな奴に殺されるなんて俺が許さない。

    「お前みたいな奴に…殺されてたまるか…!」

    ペンダントを握っている手に力を込めて相手に叫ぶ。
    守る。俺は死んでも美鈴を守ってみせる…!
    だから、凛さん力を貸してくれ…!
    瞬間、ペンダントが…いや俺の周りが赤く光る。

    「サーヴァント…⁉︎何故今…!きゃあああ…!」

    今度は逆に女が悲鳴を上げて吹っ飛んでいく。
    目の前には、赤い何かが立っている。
    大きな、背中だ。
    それに何だこの謎の既視感は。
    そうだ、さっきの弓を放つ直前の赤い何かだ。
    しかし、実際に見るとそれだけではない気がした。
    こんな状況なのに、なんだか安心する。

    するとゆっくりと赤い何かは振り向いた。

    「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。君が………」
    「あ…アンタ…」

    その顔は、よく知っている。
    出掛ける度に一度は見る顔だ。
    玄関に飾っている、爺さんの横にいる知らない男。

    「…す、すすむ」
    「アンタ、爺さんの…」

    一瞬、この場が俺と赤い男の2人だけかのように静かになった。
    だが俺の頭の中はそれに反して混乱している。
    謎の奴に襲われて、かと思えば見た事がある男がまた奇抜な服装でいきなり現れて…。
    なんだ、何だこれ…。
    それにこの男、俺の名前知ってるのか。
    という事は、何も知らないのは俺だけか。

    「すまない、少し混乱した。一先ずこの状況を打破しよう。君はその場でじっとしてその娘を介抱していたまえ」
    「ちょ、ちょっと待って…」
    「直ぐに片付ける。説明はその後だ」

    そう言って男は女の元へ一瞬にして向かった。

    「いきなり現れて、貴方何処の英霊よ!」
    「さて、何処かね。しかし貴様に教える義理はない!」

    男は両手に剣を持ち、相手を何度も斬りつけた。
    吹っ飛んだ時点で大きなダメージを受けていたのであろう相手はそのまま男の攻撃をもろに受ける。
    圧倒的だ。




    「情けないわ…私、ここまでのようね…」
    「みたいだな。しかし抵抗一つもしないとはな」
    「別に、私は聖杯とかどうでも良かったのよ。召喚してみればあんな穢れたもの…いらないわ…。でもマスターに令呪で縛られてたから仕方なくよ。早めに撤退出来て良かった。礼を言うわ」
    「礼なぞいらん」
    「そう、素直じゃないのね」

    女は光に包まれて消えた。
    そこにあるのは血塗れになった床のみ。
    …すごい。
    あれだけ強かった奴が一瞬で倒された。
    なんだ、何なんだ。
    誰か、俺に教えてくれ…

    「おい、おい!マスター!すす…」

    頭が混乱し過ぎたのか、いきなり力が抜けて俺は気を失った。







    俺がまだ小さい頃から朧げであるのにこびりついたかのように離れない記憶がある。
    赤い服の男に助けられた事だ。
    あれは爺さんの家に親父と2人で行った時。
    自然に囲まれててそれが凄く、面白くて走り回っていたら迷子になってしまった。
    右も左も分からなくて、段々外も暗くなってどうしたら良いのかと泣きそうになっていた時だ。

    「迷ったのかね?」
    「うん…ここがどこかわからないんだ…」
    「そうか、夢中になる事は良いがちゃんと周りを見るべきだ…」
    「うん…ごめんなさい」
    「謝るなら君の家族に謝りたまえ」

    暗くて、涙で視界がボヤけていて顔がイマイチ分からなかったが、全身赤いのだけはわかった。
    男は大きな手で俺の頭を優しく撫でた。

    「このまま真っ直ぐ行って、青い屋根の家が見えたら右に曲がるんだ。そうすると君の帰りたい場所に直ぐ着くだろう」
    「なんでわかるんだ?」
    「そうだな…私は君の事は分かるんだ」
    「そうなのか…不思議だな」
    「さぁ、行きたまえ」
    「うん、ありがとう!」

    その後、男が言った通りに進むと爺さんの家に着いた。
    珍しく親父に叱られ、爺さんはホッとした顔をしていた。
    「赤い人が助けてくれた」と言うと、2人揃って笑って「良かったな」と一言だけ。
    ただそれだけの何とも無い記憶。
    だがその赤い服の男が何故か忘れられない。
    さっきまでいた男、もしかして…






    「ようやく目覚めたかね」

    気が付くと、自分の部屋の天井と白髪の浅黒い男が見えた。
    いつの間に帰って来たんだ…じゃなくて…。

    「と、遠坂は…⁉︎」
    「一言目が他人の心配か。見た目だけではなくそんなところまで似てしまったのか…。彼女なら大丈夫だ。先程、マスターより早く目覚めている」
    「そうか…良かった…それで、アンタは…」
    「私はサーヴァント、アーチャーと呼べば良い」
    「サーヴァントって、何なんだ?」
    「それらを含めて今から説明をする。居間に行くぞ」

    マスター、サーヴァント、アーチャー…何もかもが分からない。
    そしてアンタは誰なんだ?
    さっき襲ってきた奴は何だ?
    遠坂は一体何をしているんだ?
    胸倉を掴んで聞き出したい勢いだがグッと堪えてアーチャーという男の後ろを着いて行った。

    居間に入るとそこには父さん、遠坂と凛さん、そして知らない外国の女の子がいた。

    「え、えっと…」
    「丞!目を覚ましたんだな…良かった…」
    「親父…ごめん、約束破って…」
    「本当だ…!無茶しやがって…いやでも美鈴ちゃんを守ったんだな。とにかく何もなくて良かった…。アーチャーもありがとうな。さっきは取り乱して悪かった」
    「いきなりの事だ、仕方がない。また大人になったな」
    「そりゃもう40近いオジサンだ。アーチャーの歳を越してしまったよ」

    「えっと…」

    また、話が追いつかない。

    「丞君」

    名前を呼ばれて振り向くと、凛さんがこれまで見たことのないぐらいの真面目な顔をしていた。

    「美鈴を助けてくれてありがとう。貴方がいなかったらこの子は今ここにいなかったと思うわ」
    「いや、俺はただがむしゃらになってただけですし…」
    「でも一番巻き込みたくなかった貴方を巻き込んでしまった…。だから今から全てを話すわ。聖杯戦争の事を」
    「せいはい、せんそう…」
    「ええ、聖杯戦争。今から約50年前、貴方のお爺さん…衛宮士郎も丞君みたいに巻き込まれてしまった魔術儀式を基にした魔術師同士での戦争よ」

    それから、凛さんは淡々と聖杯戦争について説明をしてくれた。
    7人と魔術師と7騎のサーヴァントが参加して願いを叶えるという聖杯を巡っての戦争。
    最後に残った魔術師とサーヴァントが聖杯を獲られる。
    元々は遠坂・間桐・アインツベルンの御三家から始まった魔術儀式であったらしいが、聖杯の権利を独占しようと殺し合いを始めてしまったのがこの戦のきっかけだそうだ。
    それから約60年に一度のペースで第二次、第三次と繰り返され、前回は2004年に。
    そして今回は約50年後の今、始まってしまったとの事。

    「だけどね、聖杯は願いを叶えてくれるものではないの。第三次聖杯戦争で聖杯が汚染されてしまったのよ。あれはもう願望機なんてものじゃないわ。アインツベルンも諦めてくれた事で聖杯は放置される事になったし、余所者が冬木に来て聖杯を横取りしに来るようになったから本当は私の代で聖杯を解体して終わらせたかったの。だけどそれが出来なかった。聖杯を復興しようとしていた魔術協会の一部と対立していた間に誰かが聖杯に触れられないよう封じ込められたのよ。ようやく魔術協会の奴らとの騒動が終わったと思って帰ってみれば…ね。どうしようもなくなっちゃって現在に至るってわけ。今でも自分が情けなくて頭に来てるわ。
    そして第六次聖杯戦争が始まった。
    だけど今回は願いを叶える為に戦い合うんじゃないわ。解体しようとしている私達と、聖杯を独占しようとしている奴らとの2組に分かれての戦争よ」
    「じゃあその横取りしようとしている奴らに勝てば良いんですね?」
    「それがね、そう簡単にはいかないの。どういう訳か今回参加者全員が【聖杯を解体しよう】と動こうとするわ。
    だけどそれは表向き。
    誰が横取りしようとしているのかが分からないの。お互いがお互いを疑いながらになるわ。よくある人狼ゲームみたいなものね。誰かが協力を求めてきても、それが本当なのか、欺こうするのかは分からない。それは今回参加している御三家もよ」
    「さっき言ってた御三家ですよね。
    だけど間桐はもう魔術師はいないって…」
    「いえ、そうとは言い切れないわ」

    遠坂が机をバンと叩いて話を割り

    「蓮実の祖母である桜さんは魔術師なのだから、表向きそうではないと言っていても本当とは限らない。そうは思いたくないけどね。だけど丞は今日に限って蓮実から弓道部の手伝いを頼まれた。丞を遅くまで残らせる為だったかもしれないわ。それに、蓮実のご両親は現在冬木にはいないし蓮実も少し前に数日間ご両親がいる国に行っていた。何だか怪しく思わない?」
    「そう、なのか…?」
    「そうよ。アイツ、ナヨナヨしてるかと思いきや世渡り上手なところもあるし、何考えてるか分からない事が多過ぎだし。そういうところ苦手なのよ…」

    遠坂は蓮実の事は嫌いというわけではない。
    寧ろ生まれた頃からずっと一緒にいるから家族のような間柄だ。
    だけどお互いに成長してから蓮実が変わったとかで距離が出来ている…らしい。
    そりゃ俺達も成長しているから蓮実も大人になっていくんだ。
    そうなれば考え方だって変わっていく。

    「俺は蓮実は別に怪しくは思わないけどな…」
    「甘いわね、蓮実も間桐の血筋の人間よ。油断は出来ないわ」
    「だからって蓮実をいきなり疑うのはどうかと思うけど」

    お互いの考えに一歩も引かず沈黙する。
    そこに凛さんが切り替えようと手を叩いた。

    「はい、蓮実君の件はひとまず終わり。ここで言い合ったって時間が過ぎるだけよ。さっき桜に連絡をして念の為に蓮実君の様子を見てもらうようお願いしたから。
    では聖杯戦争の話の続きよ。
    今回の聖杯戦争は今までとは違うと言ったけど、イレギュラーはそれだけじゃない。
    今回の聖杯戦争は幾つかエラーが起きている。要するに不安定なの。
    まあそれは解体しようとしていた私達が色々と妨害をしたからね。
    別に封じ込められたからって数十年何もしない訳ないわ」
    「不安定…というのは」
    「まず一つは、サーヴァントの力が前回より極端に弱い。セイバーもアーチャーも本来はこんなものではなかった。
    これに関しては聖杯が妨害によって本来の力を出し切れていないからと推測しているわ」
    「全体的に弱いのであれば問題ないんじゃないか?寧ろ一般住民の被害も少なくなりそうだ」
    「まあそうなんだけれど、作戦とかが立て難いのよね。それに、聖杯を手に入れようとしている輩がどんな手を使ってくるのかも分からない」
    「なるほど…」

    弱いとはいえこれまでの経験が活かしきれない。予測がつき難いから対策を打ち難い。
    それに加えて魔術師はどんな手を使っても聖杯を手に入れようとしてくる。
    つまりはどこまで被害を抑えられるかは分からない…という事か。

    「もう一つは聖杯戦争を経験した事があるサーヴァントが何人か現界している事。これに関しては聖杯が汚染されているのに召喚されようとはしないからだと思うわ。だけど、汚染された聖杯を壊そうとしている私達には縁のあるサーヴァントが協力しようと呼びかけに応えてくれている。これに関しては大きなプラスね。ステータスも分かってるし作戦も立てやすい。それに、信頼関係も築きやすいわ。今分かっているのはセイバーとアーチャーね」

    凛さんが2人に目を向けて言うと、甲冑を着けた少女が立ち上がる。

    「紹介が遅れました、ススム。私はセイバー。
    元々はシロウのマスターでした。
    ヒロキの子…シロウの孫をこの目で直接見れたのはとても嬉しい。
    短期間になるかと思いますが、これからよろしくお願いします。
    それと、美鈴を助けてくれてありがとうございました。まさかこれ程までに力が弱まって敵のマスターが召喚した使い魔に手間取るとは…自分が情け無い…。次はこの様な失態は冒しません」

    そう言って、手を差し出してきたので握手をする。
    その手は金属に纏われていて硬い。
    本当にこの時代には生きていない英霊なのかとその感触で実感する。

    「よろしく、セイバー。あのさ、そのセイバーというのはクラス名なんだよな?本当の名前は聞いても良いか?」
    「すみません、ススム。
    真名を明かすという事は手の内を晒すという事。貴方はシロウと同じく対魔力が少ない。
    なのでいつ敵に操られたりして漏れてしまうか分かりません。なので…」
    「なる程、それは聞かない方が良さそうだな」
    「はい、ありがとうございます。
    それに、貴方とシロウは凄く似ているのでセイバーと呼ばれた方が私は嬉しいです」
    「そうか、分かったセイバー」

    次に、アーチャーが立ち上がる。
    赤い服がどうしても気になって見てしまう。

    「私はアーチャー、丞のサーヴァントだ。
    元々は凛のサーヴァントだ。
    真名はエミヤ」
    「は…?」

    こいつ、真名を言いやがった…。
    セイバーの流れだと言わないだろ普通は…。
    あとエミヤって…何で俺達の苗字と同じなんだ。

    「契約しているといずれ知られる事になるので私は先に話しておこう。
    丞からすると、私は祖父になる。君の父である弘樹は私と衛宮士郎の息子だ。そして私は衛宮士郎が正義の味方を目指し、辿り着いた成れの果てだ」
    「………」

    情報量が多過ぎて思考が追いつかない。
    親父を産んだ両親は爺さんと、もう1人は人では無い事は聞いていた。
    だけど男でしかも爺さんと同一人物という事で合ってるのか?
    男同士でどう産んだとか、そもそも同一人物が産んだのかとか色々疑問と聞きたい事は山程あるがまず1番に聞きたい事は…

    「アンタ、俺が小さい頃に一度だけ会ったよな?」
    「ああ。丞が小さい頃に私と士郎が住んでいた家に来た時、迷子になっていたところを見兼ねて助けた」
    「やっぱりあれ、夢とかじゃなかったのか…」

    記憶が殆ど無かったから実はそんな事起きてなかったんじゃないかとか思っていた。
    だけどあの赤色がどうしても忘れられなかった。
    やっぱりあれは本当にあったんだ。
    しかしそうだとすると疑問が一つ増える。

    「何で俺には会ってくれなかったんだ?」
    「弘樹を産んだ時に、私と士郎は魔術師ではなく普通の人として生きて欲しかったが、片親が人ではない私であるとそれは難しい。なので孫の丞には私は会わずに出来るだけ一般人として過ごしてもらおうと思った。
    だがその願いも叶わなかったのだが…」

    一度だけ、爺さんに何故親父の母親は居ないのかを聞いた事がある。

    「今はいないけど、遠くから丞と丞の父さんを見守っているよ」

    と、その一言だけ。
    その時は天国とかそういうところからと思っていたのだが、そのままの意味だったのか。

    「そう、か…」

    別に、これまで魔術師の世界から俺だけを離されていた事に仲間外れとかはこれまで全く思っていない。
    全員が俺の事を想っての事であり、彼もその1人だったのだ。
    遠くから見ていてもそこは俺のような人間は立ち入ってはいけないという事は何となく分かっていた。
    だから俺は俺の出来る事で人を助けたいと、爺さんのような正義の味方になりたいと思っていた。
    しかしこのたった数時間で沢山の事があり、打ち明けられて自ら入ろうとしなかった世界に足を踏み入れようとしている。
    辛い事もあるだろう。
    親父達が迷惑をかけたり、悲しむかもしれない。
    大怪我をするかもしれない。
    死ぬかもしれない。
    だけど答えは既に決まっている。

    「今は、行われている魔術師同士の戦争を早く終わらせて聖杯を解体しないといけない…そして冬木の人達が巻き込まれないようにしないといけないんだよな。
    正直、まだ飲み込めてない事もあるけど立ち止まる暇は無い…という事は分かってる。
    とりあえず、改めてよろしく…えーと爺さ…婆さ…?」
    「先程も言ったがアーチャーと呼べば良い。皆にはそう呼ばれていた。因みにだが弘樹を産んだのは私ではなく士郎だぞ。なので正確には私が爺さん、士郎が婆さんだ」
    「え、」

    マジかよ。




    一夜に起きた出来事から、俺は聖杯戦争に参加する事になった。
    関係のない人を巻き込まない為に。
    美鈴や凛さん達を助ける為に。
    それが一番の目的ではあるが、ずっと憧れている爺さんと同じ場所に立てた事に気分が高揚しているのも確かだ。
    今はそんな気持ちで動いてはいけない事は分かっているが、隠しきれないでいる。



    だけどこの時の俺はまだ何も知らない。
    俺の憧れていた正義の【衛宮士郎】がどれだけ歪で逸脱しているのか。
    そして、その正義の味方を目指したその先がどれ程残酷なものなのか。
    それをこの聖杯戦争で痛いほど知る事になる。



    以上です。
    ここまでお読みいただきありがとうございました。
    この先は、孫が憧れていた衛宮士郎がどれだけ歪んだ思考をしているのかを知り、アーチャーの過去を知った先で自分はどのように歩んでいくのかを決めていく感じになると思います。

    間桐の孫の蓮実はシロでもクロでもどっちでも良いなと思ってました。
    書いてる人間が腐っているので丞の事が好きなのに、このままでは美鈴に取られてしまう…だからこの際何でも良いから丞を自分のモノにする為に…とか。
    又は、後半までクロなのでは?と美鈴と丞に思わせながらも実は桜ちゃん凛ちゃん世代と話を合わせて裏で動いてくれていた…とかも考えていました。

    最後は色々と片付けて、丞はアーチャーと握手でもしてお別れして出来る限りハッピーエンドを目指したかったのですが、書ける気がしないので書きません。。。

    中途半端に長い文章に付き合っていただき本当にありがとうございました。

    最後にこんなこと言うのも何ですか、もし感想とか頂けたらむせび泣いて喜びます。。。
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