三度夜夏の夜はまだ明るい。
「あいつと…付き合う?ことになった、一応」
「え?寧ろ付き合ってなかったんか?」
更衣室で着替える二人組は、目線を合わせることなく、いつものように他愛なく話す。
「は?逆に何で付き合ってると思ったんだよ?」
「だってお互いの家に何回も行ってるし遊園地にも一緒にいくんやで?どう見ても両思いやnアイテッ」
「あいつはそういうタイプなんだよ…分かんないだろ」
杏太にとっては他愛ないことではない。
それに対する彼も、これが思い切った話であることを、ホントはわかっている。
「いや俺は知らんけどさあ、キョウちゃんはあの人んこと知っとんやろ?」
「…そうだけど」
わかった上で他愛ないようにしているのは、そうすることで救われると思うからだ。
「自信なかったら言わんのや?真面目やねぇ^^」
「お前なぁ」
「やだやだ、キョウちゃんって乱暴やわ〜!こんなんとアフターしたがる子なんておらん!」
「こんなんって言うな!………俺だってそれくらい、分かってるよ」
これがいずれ、杏太にとって他愛ないことになったらいいと、そう思うから。
「…ま、姫たちも親しい相手があの”愛瀬紲”ならノータッチやない?いや、逆に愛瀬紲狙いの姫たちが増えるかも?」
「面倒くせぇ…」
「でもまさかキョウちゃんがあの人にメロメロなんて思わんやろうね〜!」
「お前歯くいしばれよ」
「キャータスケテー」
整った身なりで、ばたばたと子供みたいに走る。
まだふけてしまわないように。
「お前ら開け作業手伝えー」
「「は〜い」」
夏の夜はまだまだ明るい。
【杏太の同僚】
源氏名:シマ
年齢:29歳
元々杏太の後輩で、今は二人揃って年長組。元々関西出身で、今でも関西弁。
本名は「坂田 志万(さかた しま)」。双子の弟がいるが、弟側に猛烈に嫌われているため、しばらく会っていない。