甘々と水の結晶「可愛いね」
「………。」
彼は事ある毎に 口癖のように言う。
かわいい などと形容され、初めは大人の男に向かって
それは些かおかしなものではないかと抗議をしてみたが、
「かわいいんだから仕方ない 」などと理解し難い理由で一蹴された、
湯浴みのあと髪を乾かす時、
自分の髪なのに俺には一切手を触れさせず
俺にやらせて と言って
乾かし、櫛でとかして、と甲斐甲斐しく世話を焼いては
「綺麗だね」「いい香りがする」などと成人男性に対して使うには到底似つかわしくない言葉を散々垂れ流す。
そうして 、「かわいいね」と言われながら寄り添って眠るのが休日の日課になりつつあるのが自分でも可笑しくて笑える。
食事中にひしひしと感じる視線にももはや慣れてしまった。
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