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    kikinanana666

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    kikinanana666

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    なんさに(にゃんさに)審神者視点

    母の体内にいた頃から神さま達の恩恵を受け、審神者の娘として生まれた後も大切に育てられてきた自覚はある。
    普通の子等よりも所謂霊力の値が高いのは、共に過ごす神さま達のおかげ。
    母は立派な審神者だ。その娘、さらには霊力も高いとなれば将来は立派な審神者になるだろうと政府ではよく話題に上がったものだった。
    しかし審神者に必要な、刀(神さま)を顕現する能力が無いと発覚してからはその話題はぴたりと止まった。
    「霊力が無駄にあるだけ」「たからの持ち腐れ」など言われたが、母は強いひとであったのでそのたびに食ってかかる勢いであった。政府で働く父がそれを制する苦労はなかなかだったと思う。
    母も父も、神さま達も優しく、審神者になることが何も大事な事ではないよと、自分の好きな道を歩めと諭してくれた。
    しかし幼い頃から見てきた母の審神者としとの背中をみて育ったからか憧れは強いものだった。母と同じように神さまを顕現し、共に時間遡行軍を倒し歴史を守りたかった。
    昔はそんな風に夢を語ったが、何度も鍛刀の失敗を繰り返し、いつからか口にしなくなっていった。
    現世の学校に通いながら母の仕事の手伝いをして普通に暮らす日々に、どこか寂しさがないわけではい。口に出さないだけで、いまだに憧れはある。高い霊力のお陰で手入れや刀装を作る手伝いはできた。資料をまとめたり、神さま達のお世話や一緒に畑仕事をするのも好きだった。
    それでも皆に内緒で時々鍛刀をしている。おそらく母と初期刀はそれを知っているがあえて何も言わないのはきっと優しさだろう。その優しさがありがたかった。
    今日も皆が寝静まった頃にこっそりと鍛刀室へ入り、母に教わって何度も挑戦しては失敗した手順を丁寧に行う。失敗しては意味が無い馴れてしまった作業に苛立ちと悲しさの複雑な思いが体をめぐり、燃える炎をぼんやりと見つめた。
    また今日も駄目なのか、と視界が涙で歪む。神さま達の恩恵には感謝している。でも顕現できなければ意味はない。何がいけないのか?何が足りないのか?自分の欠陥はどこなのか…。考えれば考えるほど頭はくらくらと揺れ膝を抱えてうずくまる。
    「私の、神さま…。」
    呟いた言葉は何を求めたのか自分でもわからない。居ないと思ったのか、会いたいと願ったのか。

    ―チリン―

    不意に聞こえた鈴の音に体がふるえる。誰かいるのかと顔をあげ回りを見てもここには自分一人だった。

    ―チリン、チリン―

    また聞こえた。心臓が自然と早く脈打っていく。手にはじんわりと汗がにじんでいる。ゆっくりと立ち上がると視界に一つ花びらが落ちた。
    全身の産毛が逆立つ感覚がわかる。この花びらは、母の後ろで何度も見た。そうだ、これは顕現の、花。
    ヒラヒラと舞っていた花びらが増え風が吹く。甘い香りに胸が苦しくなった。手が震えている。

    「刀を取りなさい!!」

    後ろから聞こえた凛とした母の声に漸く我に返り両手を差し出す。花の中から刀が見えた。次の瞬間光が部屋を包み思わず目を閉じる。
    風がおさまりまぶたの向こうに光が無いと感じとるとゆっくり目をあけていく。
    心臓がいやにうるさく耳に響き、鼻の奥がツンとする。
    目をあけた先には、母の本丸には居ない人物が立っている。何も考えられなかった。色々な感情が溢れだして言葉もでない。ただ涙だけが出た。
    体は勝手に動いて気がつくと相手を抱き締めていた。顕現したばかりなのにきっと戸惑う、ごめんなさい。ぎゅっと抱き締める手に力が入る。
    「はじめまして…。」
    かすれた声は聞こえただろうか。憧れた母の背中に追い付きたい、なれはしない審神者の夢を見させてくれる私の刀。私の神さま。

    16歳、冬も終わりに近づいた頃の出来事。
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    kikinanana666

    MOURNINGなんさに(にゃんさに)審神者視点母の体内にいた頃から神さま達の恩恵を受け、審神者の娘として生まれた後も大切に育てられてきた自覚はある。
    普通の子等よりも所謂霊力の値が高いのは、共に過ごす神さま達のおかげ。
    母は立派な審神者だ。その娘、さらには霊力も高いとなれば将来は立派な審神者になるだろうと政府ではよく話題に上がったものだった。
    しかし審神者に必要な、刀(神さま)を顕現する能力が無いと発覚してからはその話題はぴたりと止まった。
    「霊力が無駄にあるだけ」「たからの持ち腐れ」など言われたが、母は強いひとであったのでそのたびに食ってかかる勢いであった。政府で働く父がそれを制する苦労はなかなかだったと思う。
    母も父も、神さま達も優しく、審神者になることが何も大事な事ではないよと、自分の好きな道を歩めと諭してくれた。
    しかし幼い頃から見てきた母の審神者としとの背中をみて育ったからか憧れは強いものだった。母と同じように神さまを顕現し、共に時間遡行軍を倒し歴史を守りたかった。
    昔はそんな風に夢を語ったが、何度も鍛刀の失敗を繰り返し、いつからか口にしなくなっていった。
    現世の学校に通いながら母の仕事の手伝いをして普通に暮らす日々に、 1532

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