さよならだけならいくらでも 2「あー、また痕付けてるし」
シャワーを浴び終えて鏡を覗けば、首元の商品コードのあたりが薄ら赤くなっている。
ここ最近、彼は行為の度に自分の体に痕を残す。
それからセックスの始めと終わりに必ずと言っていい程首にある商品コードに口付けをする。
首の商品コードは奴隷として売られるときに付けられる消えない刻印だ。
彼から何か問われたことはないが彼程の教養を持つ人間がそれを知らないなんてことはないだろう。たとえそういった文化のない星でしか暮らしたことがなかったとしても。
「見えるところには付けるなって何回言ったら……」
じ、と鏡の中の自分を凝視する。
くる、と鏡に背を向けて振り返れば、赤い花弁のような痕は胸や腹、背中にも付けられていて、それらは遠目でもわかりそうなくらいにくっきりと自分の白い肌に落とされている。
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