雨の日、星の日 夢を見ていた。
ふかふかで大きな黒い猫が、水戸の顔を覗き込んでぼたぼたと泣いている。そう、黒猫の金色の目玉からは大粒の涙が次から次へと湧いてくるのだ。可哀想で、でも可愛くて、その涙を拭ってやりたいのにどうしてだか腕が動かない。黒猫は水戸をすっぽり覆ってもあまりあるほどに大きい。
「泣くなよ」
にゃあ。
猫は返事をした。そして慰める水戸なんてお構いなしにますます涙をこぼす。
にゃあ、にゃあ。
だって、だって。
「だって、オメーが」
オレに、なんにも心配させてくれねーんだもん。
◇◇
流川の初恋が始まったのは、高校一年生最後の土曜日の午後だった。前日までの花冷えが嘘のようにうららかに晴れた日だった。練習は午前中で切り上げられたのに、まだもっとバスケがしたいと流川は思った。跳びたい。もっともっと、思い切り走りたい。今日が自分にとって居ても立っても居られないほどのとびきり「良い日」なのだと言う予感がした。
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