猟犬と大猫エルダーの猟犬と御大の大猫。連合の日本組織の重鎮二人のボディーガードは、裏で密かにそんな風に呼ばれている。
寡黙であまり表情を変えないユウイチと、時に自分の主さえも振り回す竜三。並び立つ双璧でありながら、どこか裏に入る前の穏やかさを漂わせているからだ。
「センセ。はい、イタリア土産」
任務から戻ってきた竜三が、空港の袋を石川に差し出す。
中身はブランドもののチョコレート、まじまじとパッケージを眺めた御大はあごひげを撫でて笑う。
「妙な気を遣いおって。ヴェネツィアのネズミ退治だけで十分であったのに」
「観光客装ってんだから、土産のひとつもないの変じゃん」
ユウイチもまた、こちらは高級そうなブランドの袋を父であり、主である茂に差し出す。高級革製品の店で買った手袋。
1290