幻覚「座名九郎の名前って、襲名で受け継がれたものなんだよね」
「はい、そうですよ。どうかなさいましたか?」
「座名九郎の本名って何?」
「え? 本名ですか…………? それはキャプテンでもちょっと教えられませんね」
「なんで?」
「人間、秘密があった方が格好つくでしょう?」
「そんな理由!?」
「それに、本名を教えると呪われるとかそういう話もありますしね」
「呪いなんてあるわけないじゃん! というかなんでいきなり怪談なんだよ!」
「まあ私としても、今はまだ教えるつもりはないんですよね。いつか機会があれば教えてあげましょう。それまでは自分で探してください。そのうちどこかにヒントが転がっているかもしれませんよ」
「むうぅ~、全然わからない…」
「それでは、本日はこれぐらいにしましょうか。お疲れ様です。キャプテン、また明日」
そう言って座名九郎はグラウンドを出て行った。結局、彼の本名については何も分からないままだった。