「聡実くんとおって、俺弱虫なってしもうたんかもなあ」
安アパートの扉が開いて、狂児はそんなことを呟いた。
「どこがやねん 狂児のアホボケカス!!またムショぶち込まれよって、僕かて大阪連絡して無理くり聞いたわ!!何が、何が聡実くんには教えるなやねん!!僕がどんな気持ちでおったとか、か 考えたことあったんか!!!!」
「あったよ」
「は」
息が詰まった。それは予想外の言葉で、いや頭では何度もそうだったらいいと反芻してきた言葉だった。でも間髪入れずに「あった」と即答されると二の句は継げなかった。
「刑務所おった時も、ずうっと聡実くんのこと考えとった。懲役は後悔してへんし、しゃあないっちゅうんかな……。でも聡実くんの傍におられへんのがこんなに辛いんかって改めてしったよ。待たせてもうてごめん、知らせなくてごめん、なあ聡実くん もう黙っていなくなったりせえへん お願い お願いやからこっち向いて お顔見せて?」
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