漆黒トキメキメモリーズ今日も竹刀片手に校門前で生徒達に軽い挨拶をする体育教師。彼の名はヤミ・スケヒロ。
傍若無人だが、生徒や教師からの信頼は厚い。でもPTAからは目をつけられているらしい。
そんな彼の元に駆け込んできた女子生徒がいた。
「ヤミ先生!」
「どうした、バネッサ」
彼の受け持つクラスの生徒、バネッサであった。
「さっき変な人に言い寄られて…股間を蹴りあげて逃げてきたから暫くは動けないはずなんです」
「アクティブだなぁ、お前は。まぁ、そっちに居るままなら追っ払ってくるからお前は中入ってろ」
バネッサが生徒玄関の方まで行くのを見送ると、先程彼女が指さしていた方に向かって歩きだした。
すぐに、その不審者は見つかった。
電柱の傍で蹲っているのを、写メられてネットに晒されているようだ。
「ラック、それすぐ消しとけ呪われるぞ」
「はーい」
写メっていた生徒を軽く注意して、学校に向かうように促すと、ヤミは不審者のスーツの襟首を引っ掴んで起き上がらせた。
「ウチの生徒に何してんだテメェ」
すると、不審者は悪びれることなく返した。
「美しく、聡明そうだったからね、是非私の女……ではなく私の学校に来ないかと」
「ふーん、そうかよ。二度と来んな」
「あっ、待って、アーッ!!!」
不審者を投げ飛ばし、ケツを向かせると思いっきり竹刀でケツをシバキ回してヤミは戻って行った。
のに、翌日。
「先生ェ!!!校門の前に不審者が!!!」
朝の挨拶でもしに行くかと、職員玄関から出たところで、担当クラスの生徒の一人であるマグナが大慌てでやってきた。
そして、彼の指す方向には昨日シバキ回したはずの不審者が校門前で高速反復横跳びをしているものだから、他の生徒が怖がって通れずにいた。
「やぁ、待ってたよ。ヤミ・スケヒロ!」
「何で俺の名前知ってんだ。気色悪ぃ」
反復横跳びを続けたまま喋り続ける不審者。闘牛だったら突進してたってくらいウザいったらありゃしない。
「色々と調べたんだ、私を叩いた者なんて初めてだったからね!」
「気色悪ぃ。てかなんで、反復横跳びしてんだ。帰れ」
「こうしたら、君が確実に来そうな気がしてね。どうだい?私の学校に来ないかい?」
「行くかボケ!!!」
傍にいたマグナから金属バットを半ば強奪のような形で借りると、カキーンと爽快感のある音…ではなく。グシャボキィと不協和音を響かせて、不審者を撃退した。
尚、不審者は漆黒のブレザーを纏った青年に回収されて行った。
「…すみません」と胃痛をこらえたような顔をする青年にちょっと不憫さを感じたヤミであった。
だがしかし、次の日もその次の日もやってくる不審者。(そして毎度回収しに来るブレザーの青年。菓子折まで持ってくるようになった)
「警察呼ぶぞテメェ」
「スペード学園の校長である私が逮捕されるとでも?」
「なんだその自信。つーかテメェ、校長なのかよ。エイプリルフールならぬエブリデイフールか?」
「その私に物怖じしない態度。実に気に入っている。やはり君は」
「行かねぇよ」
「じゃあ、こうしよう」
不審者は不敵に微笑むと、ヤミの背後に回ってハンカチを口元に近づけ何かを嗅がせる。
しまったと思った時には意識は昏倒し、不審者の腕の中に抱かれていた。
「素直に従わない君が悪い」
そう言ってヤミを連れ去っていく不審者。この時、奇しくも生徒も教師も皆帰った後で、誰も目撃者は居ないというご都合展開。
さて、不審者ことスペード学園校長ダンテ・ゾグラティスに誘拐されたヤミ先生の命運と貞操はどうなるのか!??