蝶々ラキは蝶だと思う。
ちゃんと付き合う前から、俺の檻の、格子の隙間からヒラヒラと入ってきて、蹲るばかりの俺の周りを飛んでいた。うっとおしくも心地良さが大半を占める鱗粉を撒き散らしながら。
疲れると檻の外に出ていく。
その時に手を伸ばそうと思ったことは一度だけでは無い。
ただ、伸ばせなかった。
理由なんて、幾らでもある。
彼女は俺の周りを飛ぶのに、大事な所には踏み込まず、彼女もまた踏み込ませない。
そんな関係だったが、付き合い始めてからは変わった。
あの頃感じていたうっとおしさは無い。
彼女が眩しくてそう思っていただけだった。
今は心地良さしか残っていない。
彼女も、そうなのだろうか、飛び疲れれば俺の肩で休むようになった。
「…ラキ、こんな所で寝るな」
「ん…」
こうしてソファーの上で、俺の肩にもたれて眠る彼女に触れる事に躊躇いはない。
小さくて、柔らかくて、強くて、明るくて、優しくて、こんなにも綺麗な蝶を、籠の中で独り占め出来ることの幸せさを今日も噛み締める。