プリムラ・ジュリアンたまたまだ、互いに出歩いてたら鉢合わせて少し話していこうかと、近くの喫茶店に入った。
「…お前すごいよな」
注文が来るまでの間、ナックルが呟くように言った言葉にラキは首を傾げる。
「なんで?」
「シュートだよ。アイツって誰に対しても全然心開かねぇだろ?俺に対してもだけどよ。でも、ラキだけには…」
「そうでも、ないよ」
結露で濡れるガラスコップから一口水を飲んで、ラキは言う。
「昔からアタシの料理を美味しいって言ってくれるけど、何が好きかは具体的に言ったことないし、仕事で何かあって考え事しててもアタシに教えてくれない…」
寂しそうな顔して、注文したホットレモンティーに口付ける。
「少しだけ、シュート君のテリトリーに踏み込んでもなんだか居づらくて出てっちゃうんだよね。でも、そういうものだよね」
漸く来たフルーツパフェのうさぎりんごを一口で食べて、ナックルは返さずに別の話題に変えた。
「……ところでよ、こないだ仕事先でな」
面白い話をしようとするのは、こんな暗くて寂しそうな顔は似合わないと思っているから。
とっくに諦めた想いの残骸を冷たいバニラアイスで埋めた。