技と力と運「俺の親父に会わせてやるよ」
「おっちゃんの親父さん??」
アロガンと一緒にパトロール兼買い物をしていた時、そう提案されたので好奇心旺盛なフォルトゥーナは首を縦に振った。
「気になる!!行こ行こ!!」
自分よりとても大きな手を握って、歩く。
その様はまるで親子だ。
連れてこられたのは銀翼の大鷲本拠地。
「ん?アロガンのオッサンじゃねえか。録画機壊したのか?」
「いや、親父とお嬢を会わせたくてな」
魔道具の試作機を動かそうとしていたジーシエに会ったので、居場所を聞くことにしたが、その前にフォルトゥーナが試作機に興味を抱いた。
「ねぇ!何これ乗り物!?」
「おうよ、名付けて『コメットバイク』!魔力を液体化した燃料を使って進むのさ」
自慢げに車輪が二輪付いた乗り物について話すと颯爽と跨る。
「これを作るのは楽勝だったけどよ、魔力を液体化するのには苦労したんだぜ?」
「でもやれたんだろ?流石は天才だなジーシエ」
「ねぇねぇ、動かしてみてよ!」
「よーし、見てろよ!」
ハンドルについたアクセルを握ると、ブゥゥンと聞いた事ない音がして、コメットバイクは走り出した。
「よっしゃ成功だ!!ヒャッホゥ!!」
ハイテンションで走り去ったジーシエを見届けたあと、入れ替わりに老人がやってきた。
「若いっていいのう…なぁ、息子よ」
「よォ、親父」
「このおじいちゃんが、おっちゃんの親父さんかぁ」
「ん?漸く孫の顔を見せに来てくれたのかアロガン」
老人は嬉しそうに笑う。
「いや、娘じゃないんだけどあたし」
「なんと……」
残念そうにするも、老人はフォルトゥーナの頭を撫でた。
「でも不思議じゃのう、お前さんを見てると孫のような気がしてくるわい。名前は?」
「フォルトゥーナよ」
「そうか、いい名前じゃな。儂はアンブル…気軽におじいちゃんと呼んでくれても構わんぞ」
「会ってすぐに気に入られるとはな、お嬢は人に好かれる才能ってもんがあるのかもな。親父と同じで」
フォルトゥーナの頭をワシャワシャと撫でたところで、離れたところからやかましい声が。
「やべぇ止まんねぇー!!!!」
「あ、ジーシエのオッサン戻ってきた」
「様子が変だな」
どうやら、コメットバイクが暴走を起こしたらしい。
「どーするの!?」
「ふむ、儂に任せなさい」
アンブルが一歩前に出る。
「じーさん!?いくらアンタでも無理だろ!?」
「問題ないわい」
猛スピードで迫ってくる暴走バイクに、怯むことなく両手を広げて、掠れた青色の魔導書と共に構える。
「吸収魔法 凪海の構え」
すると、不思議な事にバイクはアンブルの両手に触れた途端に止まった。
「え?!何!?何が起きたの!」
「親父の吸収魔法はどんな衝撃も攻撃も吸収しちまうのさ。そしてそれを合理的に使う為に拳法と合わせたんだ」
驚くフォルトゥーナに解説するアロガン。
「おお…やっぱすげぇなじーさん」
バイクから降り、エンジンを切るとジーシエは改めて礼を言う。
「ありがとよ、アンブルじーさん」
「何、これくらい朝飯前じゃよ。そうだ、新しいマッサージチェアー頼むわい」
「おうよ。……なんか、アンタら並んでると家族みたいだな」
それだけ言うと、ジーシエは工房に戻って行った。
「家族かぁ…なんかいいかもね」
「確かに悪い気はしねぇな」
「じゃあそれっぽく、三人で昼飯にでもするかの。儂の行きつけの店で」
「やったー!」
街に向かって歩く三人の姿は、はたから見たら祖父、父、娘…家族のようであった。